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「お前さん、死んだことになっているぞ」 60代自転車ドロ、34年ぶり感動再会

6月10日8時1分配信 産経新聞


 ■家出→失踪宣告、家族が葬式→警察が連絡

 自転車ドロは“死人”だった−。自転車を盗んだ東京都板橋区の60代の男が警視庁板橋署に摘発され、身元を照会したところ、法律上死亡したとみなす「失踪(しっそう)宣告」が確定していたことが9日、分かった。約34年前に故郷の山口県を飛び出し、家族と連絡を絶っており、死亡したとあきらめた家族は葬式まで行っていた。警視庁からの連絡で生存を知った弟が交番で再会。兄弟は号泣しながら抱き合った。男は窃盗容疑で書類送検されたが、再会の契機をつくった警察官に感謝している。

 「お前さん、死んだことになっているぞ」

 男は2月5日夜、板橋区弥生町の路上で、盗んだ自転車に乗っているところをパトロール中の板橋署員に見つかり、署に連行された。身元照会の結果、家族が失踪宣告を裁判所に申し立てており、平成16年に宣告が確定していたことが判明。取り調べを担当した警部補(46)に事実を告げられた男は当初、きょとんとした表情で「そんなことはない。冗談だろう」と受け流した。だが、状況を把握するとショックでうなだれ、ポツリポツリと自身の過去を話し出した。

 男は昭和49年、山口県の実家を飛び出した。「弟が先に結婚し、親戚(しんせき)が自分を『かい性のない男だ』と侮っていると思いこんだ」のが理由だ。

 上京して都内を転々としたが、家族から身を隠すため住民登録はしなかった。過去を詮索(せんさく)されたくないとの思いから、履歴書の不要な日雇いの仕事で食をつないできた。耳を傾ける警部補の前で「帰るに帰れず、家族にはいつも申し訳なく思っていた」と涙ぐんだ。「家族は必死に捜したに違いない。連絡させてもらうぞ」。警部補の言葉に男は黙ってうなずいた。

 「本当に兄ですか?」。生存を伝えられた大阪府内の50代の弟は、電話口で驚きを隠さなかった。あきらめた家族は失踪宣告を裁判所に申し立て、葬式を終えて戒名までつけていたからだ。「今すぐ会いたい」。警部補は3月4日、男の自宅近くの交番で再会できるよう段取りをつけた。

 再会の日。男が交番のイスに座って入り口を眺めていると、弟が到着。立ち上がって抱き合った。互いに泣きじゃくる兄弟。弟は「兄に間違いない。すぐに裁判所に行き失踪宣告を取り消したい。警察に何とお礼したら」と喜んだ。

 警部補は盗犯刑事として20年のキャリアを持つベテラン。「取り調べをした警部補さんは本当にいい人だった」。人付き合いが苦手で口下手な男は、警部補に直接言えず、別の板橋署員を通じて感謝の気持ちを伝えたという。(高久清史)

                   ◇

【用語解説】失踪宣告

 生死不明の者を、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度。民法で規定されている。単に7年間生死不明だったり、戦争や震災などに遭った後、1年間生死不明だった場合、家庭裁判所は申し立てにより、失踪宣告をすることができる。申し立てができるのは、不明者の配偶者や遺産相続人などの利害関係人に限られる。不明者が生きていることが分かった場合、家裁は本人または利害関係人の請求により、宣告を取り消さなければならない。

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最終更新:6月10日9時11分

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