以下の内容は"水戸"からの情報です。以下は、桜井淳所長が、株式会社ユーラスエナジーホールディング本社の技術部長と宗谷岬ウインドファームの所長に実施した宗谷岬ウインドファームについての聞き取り調査の内容です。
Q1メーカーはどこか。
A1三菱重工業です。
Q2型式は何か。
A2水平軸プローペラ式可変翼型(MWT-1000A)です。
Q3設計寿命は何年か。
A3 20年です。
Q3'建設費は。
A3' 1基当たり約2億円です。
Q3''タワーハブ(ブレードの回転中心)の地上からの高さは何mか。
A3'' 68mです。
Q4翼の直径は何mか。
A4 61.4mです。
Q4'ブレードの枚数はなぜ3枚か。
A4' 2枚の場合には騒音が大きく、全体の総量等を総合的に考慮して、3枚にしてあります。
Q5総重量は何tか。
A5タワーが106.6t(タワーは、3分割し、現場でフランジ・ボルト締めによって組み立てている), ナセル(発電機)が43.5t, ブレード(羽根)が29.7tです。
Q6電気出力は何kWか。
A6 1000kWです。
Q7周波数は何サイクルか。
A7 50サイクルです。
Q8発電開始風速は何mか。
A8 2.5mです。
Q9定格風速は何mか。
A9 12.5mです(年間平均7m)。
Q10発電停止風速は何mか。
A10 25mです。
Q11出力・風向制御方式は何か。
A11可変ピッチ・ヨー制御です(ナセルの頂上に風向・風速計が設置されており、ブレードは、常に、最適な方向に、ブレードも最適な角度に、自動制御されます)。
Q12基礎工事はどうしているのか。
A12深さ4mのうち、下部2mは直径15m, 上2mはタワー最下部直径の4mの鉄筋コンクリートで、タワー最下部フランジと太いボルト数十本で締結しています。
A13耐震設計は何gal.か。
A13平成19年6月から、厳しくなり、震度6強ないし震度7になり、高層ビル並みの500gal.くらいです。
Q14ブレードの設計基準は何か。
A14国際電気標準会議規格(IEC61400-1)です。
Q15ブレード停止の技術基準は何か。
A15特にありません。
Q16風力発電施設の各部の材質は何か。
A16ブレードは炭素繊維プラスチック、ナセルカバーは炭素繊維プラスチックかアルミニウムかステンレス鋼か鉄鋼等、タワーは鉄鋼、基礎は鉄筋コンクリートです。
Q17設備利用率は何%か。
A17年間平均30%台です。
Q18定期点検の項目と頻度はどのくらいか。
A18目視点検は年4回(各部を外観で確認、発錆等の点検、雨水浸入の有無、各部照明器具の点検)、給油点検は年2回、機械点検は年1回、電気点検年1回です。
Q19電力会社の送電線への接続はどうしているのか。
A19 発電施設からの22kVを中央変電所で100kVにして地下電力ケーブル(約30km)によって北海道電力の変電所に接続してある。
Q20バードストライクは発生しているか。
A20タワー周辺に落下しているものについては注意しています。落下の原因が、ブレードとの衝突によるものか、偶発的な病死なのか、良く調査している。
桜井淳所長に拠れば、風力発電施設の考察項目は、発電機電気出力規模・ブレードの空気摩擦による騒音・バードストライク・設備利用率の低さ・電力会社の送電線への連結・送電線への電圧と周波数変動・電力会社への売電価格(価格固定制)・経済性・国のエネルギー政策等だそうです。桜井所長は、20年間の現実的発電総量・売電価格・技術管理費・人件費・諸経費を考慮し、それらのプラス・マイナスから建設費を差し引くと、コンパラになり、国からの多額な援助金がなければ、事業として成立しないと推定しています。桜井所長は、すべての発電技術の利点・欠点を考察し、発電技術の将来を積極的に考察(原著論文の作成)して行きたいと言っていました。
良い教科書
1)飯田哲也『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論、2000)
2)飯田哲也編『自然エネルギー市場』(築地書房、2005)