富士フイルムのインスタントカメラが突如、売れ出すという異変が起きている。インスタントカメラの代名詞でもあるポラロイド(米国)が専用フィルムの生産を6月末で終了し、日本でも供給を打ち切ることを決定。これに伴い、世界で唯一のメーカーとなる富士フイルムの製品にスポットが当たり始めたということのようだ。
シャッターを押して1分以内に写真が仕上がるインスタントカメラは、現像が不要な手軽さから一時、一世を風靡(ふうび)。その後は記録などの業務用として、企業や行政機関を中心に使われてきた。
しかし、2000年代に入り、デジタルカメラが本格的に普及したことで需要が年々縮小。このため本家ポラロイドが2006年末に、半世紀以上におよんだインスタントカメラの生産を中止していた。
◇
■医療や警察に需要
業界関係者によると、最近の需要の8割以上は画像の改竄(かいざん)が許されない医療機関や、捜査証拠品の撮影に使用する警察関係者だったといわれる。
日本市場でシェアの約7割を抑えていたポラロイドが、インスタントフィルム供給を続けていた関係上、これまで混乱が生じなかったものの、この打ち切りを決定したことで、「業務用ユーザーが富士フイルム製へと機種変更せざるを得なくなった」と業界関係者は解説する。
インスタントカメラは、通常のフィルムを使うカメラと違って、フィルムにメーカー間の互換性がない。フィルムが供給されなくなれば、カメラ自体が使えなくなるためだ。
この恩恵を受けているのが、取り扱いを続けてきた都市部の大手家電量販店だ。ビックカメラの池袋東口カメラ館(東京都豊島区)では「昨年、ほとんど荷動きがなかった富士フイルムのインスタントカメラが、このところ月20〜30台のペースで売れている」と話す。生産が終了するポラロイドのフィルムはまとめ買いが相次ぎ、今や入手困難な“レアモノ”だ。
◇
■生産、1.5倍に拡大
富士フイルムのインスタントカメラには、手軽に楽しめる「チェキ」や、本格タイプの「インスタックスワイド200」などがある。「チェキ」は実勢価格が5000円程度からと入手しやすい。
富士フイルムによると、専用フィルムの販売数量はピーク時である1998年の約6割水準に落ち込んでいるものの、業務用のため今後も一定の需要が見込めるという。これに加えてポラロイドからの移行需要が上乗せされることになる。
こうした独占状態をにらみ、富士フイルムは停止していたフィルムの生産ラインを再開。昨年の同時期に比べた生産量は1・5倍に拡大している。インスタントカメラの生産台数も同様に1・5倍に増やしている。
デジタルカメラ人気が高まる一方で、独特の描写をする中国製の「ホルガ」といったトイカメラが一部マニアの間で静かなブームを呼び、定期発行の専門雑誌が登場するまでになっている。デジタル化への反動として、インスタントカメラが再度、ブームになる可能性もありそうだ。
【関連記事】
・
iPhone人気を警戒…国内他社、価格設定に注目
・
防水コンパクト型デジカメ続々 濡れても落ちても「安心」
・
高倍率デジカメも2強のシェア対決 ニコンとキヤノン
・
デジカメ各社 一芸競う 持ちたい機能あの手この手
・
マエケンが江口ナオを激写! カメラの腕見込まれプロデビュー