サブカテゴリー

加藤容疑者 携帯依存?サイト書き込み3千回

 秋葉原の無差別殺傷事件で逮捕された加藤智大容疑者(25)はインターネットの携帯電話サイトで犯行を予告した疑いが強まった。日記代わりにするように、サイトには加藤容疑者によるとみられる約3000回もの書き込みも。自ら描いた犯行シナリオへのこだわりを見せる一方、「被害妄想的な面もある」と専門家。事件の社会的背景や精神病理の有無が焦点だ。

 ▽完ぺきに準備

 「秋葉原で人を殺します」。無差別殺傷に関する書き込みは、事件約七時間前の8日午前5時21分に始まった。「神奈川入って休憩」「ひどい渋滞」などと現場に向かう様子が「実況中継」のように続く。

 「いい人を演じるのには慣れてる。みんな簡単にだまされる」。屈折した心理ものぞく。

 東京都精神医学総合研究所の妹尾栄一研究員(精神医学)が注目するのは「使う予定の道路が封鎖中とか。やっぱり、すべてがおれの邪魔をする」(午前6時10分)、「これはひどい雨。全部完ぺきに準備したのに」(午前7時半)――などの書き込みだ。

 「別の部分で犯行開始時間を気にしている点も含めて、自分が描いたシナリオへの強いこだわりやプライドがにじむ。一方で『何者かに妨害されている』と邪推する被害妄想の可能性も感じさせる」と妹尾研究員。

 「『いい人』を演じ周囲の人をだましてきたという自意識と、被害意識がせめぎ合っている。犯行は用意周到で錯乱した様子はないが、精神病理的なものがまったくないとは言い切れず、慎重に見極める必要がある」と指摘した。

 ▽携帯依存

 昨年11月から派遣社員として、静岡県裾野市の関東自動車工業東富士工場の塗装工程で働いていた加藤容疑者。時給1300百円で、残業代も合わせ収入は月30万円前後だったという。

 同容疑者によるとみられる携帯電話サイトへの書き込みは今年5月上旬からの1カ月間で約3000回にも及び、自分のことを「携帯依存」と表現する部分も。

 職場の同僚も「(加藤容疑者は)ニュースなども携帯電話でいつも見ていたし、とにかくよく触っていた」と証言する。

 工場では、200人の派遣社員を4分の1に減らすリストラ計画が進んでいた。加藤容疑者が「(作業服の)つなぎがない」と騒ぎ、工場を飛び出したのは今月5日早朝。直後には「辞めろってか。わかったよ」との書き込みがあり、仕事を首になったと思い込んだようだ。

 翌6日未明には「住所不定無職になったのか。ますます絶望的だ」「別の派遣でどっかの工場に行ったって」と追い詰められた様子。この日、加藤容疑者は無断欠勤して福井市に出かけ、複数のナイフを購入した。七日夕には犯行に使ったレンタカーの予約をした。

 ▽独り言

 警視庁の調べに「人生に疲れた」と供述したとされる加藤容疑者。最近は小、中学校時代の友人が連絡しようとしても応答がなかったという。

 携帯電話サイトへの書き込みについて、ネット社会に詳しい「全国webカウンセリング協議会」の安川雅史理事長は「個人の日記と違うのは、『誰かに見てもらいたい』『見ている人がいるはずだ』という意識が前提になっている点だ」と指摘する。

 だが、実際にそうした思いが報われることはほとんどないという。

 「一方的なつぶやきのようなものは相手にされない。書き込んでいる本人はますます孤独を深め、『いつかは誰かが気付いてくれるはず』と独り言のような言葉を積み重ねる。事件前に誰かが気付くことはないのが現実だろう」

[ 2008年06月09日 20:23 ]

ニュース

クイックアクセス
スペシャルコンテンツ

このページの先頭に戻る ▲