西日本新聞

限界集落と呼ばないで 宮崎県知事、町村長が訴え 新名称 全国公募へ 東国原知事「明るいイメージに」

2008年6月13日 06:10 カテゴリー:社会 九州・山口 > 宮崎

 宮崎県は12日、「限界集落」に替わる新たな呼称を全国から募集すると発表した。県内の山間部住民から「地域活性化に一生懸命頑張っているのに、『限界』はやる気をなくす」「使わないで」などの要望があったという。東国原英夫知事は「宮崎県は『限界集落』の呼称を使っていない。『希望集落』のような、中山間地域が元気で明るい未来に向かうイメージの呼称が良い」と呼び掛けている。

 同県は、65歳以上の高齢者が住民の半数を超える集落が104カ所あり、このうち冠婚葬祭などの共同作業が低下した集落は32カ所。

 「限界集落」の呼称廃止を要望している黒木定蔵・西米良村長は「70歳代のお年寄りが年に40回も寄り合うなどして村おこしに励む地域を『限界』と言えるのか」と問題を提起。新呼称に期待した上で「呼称だけで終わってはいけない。自分たちの手で地域づくりに取り組むことが重要」と話している。

 新呼称は、全国の宮崎県出身者や「宮崎県を愛するすべての人」なら誰でも応募可能。はがきや電子メール、ファクスで受け付け、東国原知事と黒木村長、津隈一成・日之影町長が審査する。締め切りは8月末。9月中に決定する。問い合わせは、同県中山間・地域対策室=0985(26)7036。

■言い換え問題 「縦割り」が統一の壁 「関心遠ざける」懸念も

 負のイメージがつきまとう「限界集落」の呼称については「住民感情を逆なでしている」などと各地で反発の声が上がっている。宮崎県のほか、関係省庁も新たな呼称への言い換えを模索しているが、お役所の「縦割り」が壁となり、統一呼称の定着はおぼつかないのが実情だ。地方格差の象徴として認知された呼称が消えれば、「社会的関心も遠ざけかねない」との懸念もある。

 「そこで懸命に暮らす住民にとって、まるで臨終宣告のような不快感がある」。限界集落の呼称について、山口県立大大学院の小川全夫教授(地域社会学)は過疎地の思いを代弁する。

 反発を受け、省庁や自治体はここ数年、さまざまな呼称をひねり出している。「小規模・高齢化集落」(農林水産省)や「維持・存続が危ぶまれる集落」(国土交通省)、「基礎的条件の厳しい集落」(内閣府)などが相次いで登場。長野県は、高齢化を逆手に「生涯現役集落」と名付け、イメージアップを図っている。

 ただし問題への対応は省庁、自治体ごとにバラバラ。呼称を統一する動きはみられない。

 一方で、限界集落という言葉のインパクトが、世論を喚起した側面も見逃せない。限界集落の増加に象徴される中央と地方の格差への不満は、昨夏の参院選で与党大敗の一因にもなった。

 熊本大文学部の徳野貞雄教授(農村社会学)は「集落の維持や再生への気持ちをそぎかねない言葉だが、唯一の意義は、過疎地の危機的状況を都市住民を含む国民全体に認識させたことだ」と指摘。呼称の言い換え論議にとどまらず、過疎問題解決に向けた「本質的な道を探る必要がある」と強調している。

■限界集落

 65歳以上の高齢者が人口の半数を超え、冠婚葬祭や農業用水、生活道の維持管理など社会的共同生活の維持が困難な集落。大野晃・長野大教授が高知大時代の1991年に「山村の高齢化と限界集落」と題した論文を発表、当初は学術用語として使われた。05年に農水省が限界集落の実態を調査して以降、過疎化や高齢化が進む農山村問題の象徴となった。国交省が06年に過疎地を対象に行った調査によると、将来消滅の恐れがある集落は全国に2641、うち九州は372。

=2008/06/13付 西日本新聞朝刊=

【PR】
西日本新聞読者プラザ「Par:Q」

この時代にピンときた人は「西日本新聞蔵出しフォト」。あの日、あの時の記憶がよみがえる。

【PR】
天気・交通情報
九州・山口の天気 福岡の天気 佐賀の天気 大分の天気 長崎の天気 熊本の天気 宮崎の天気 鹿児島の天気 九州・山口の天気 交通情報
九州のりものinfo.com
特集記事
博多よかとこ
博多祇園山笠
BOOK
消費者ニュース
値上げ↑ 値下げ↓
特派員オンライン
注目コンテンツ