 火事のがれきの下から、遺体が見つかった阿子島さんの自宅=16日午後零時52分、横浜市戸塚区吉田町 |
日本レコード大賞の審査委員長で音楽評論家、阿子島たけし(本名・毅)さん(65)が行方不明になっているが、神奈川県警戸塚署は16日午前、横浜市戸塚区の阿子島さんの自宅の焼け跡から男性とみられる遺体を発見した。同署では阿子島さんとみて、身元の確認を進める。阿子島さんをめぐっては失踪(しつそう)前、リベートを要求するなどの怪文書が音楽業界に流れ、レコ大がらみの失踪とのうわさも出ていた。
調べによると、遺体は自宅の庭先で、焼け落ちた雨戸の下からうつぶせの状態で見つかった。県警では火事で逃げようとして2階のベランダから庭先へ転落するか、飛び降りたとみている。阿子島さんは普段、2階で寝ていた。
戸塚署ではこれまで、室内を中心に現場検証を進めてきたが、この日から室外まで範囲を広げ、庭の掘り起こし作業をしていた。
これまでの調べによると、阿子島さんは行方不明となった12日、午後9時半すぎまで、東京・新宿のホテルで行われていた演歌歌手の泉ちどりさんのディナーショーに出席。泉さんに誘われて壇上に上がり、あいさつもしていた。
午後11時ごろには、阿子島さんによく似た男性が、最寄り駅のJR戸塚駅(横浜市戸塚区)の改札を出るのを駅構内の防犯カメラに写っていた。足取りは、ここで途絶えていた。
13日午前5時半ごろには、横浜市戸塚区吉田町にある阿子島さんの自宅から出火し、木造2階建て約77平方メートルを全焼。延焼した近所の民家5棟も全半焼した。1階居間付近が火元で、玄関の鍵は掛かっていた。
阿子島さんは妻(56)と2人暮らし。出火当時、妻は同県内の実家を訪れていた。家族は阿子島さんと14日になっても連絡が取れず、「家出する理由は思いあたらない」として14日に警察へ捜索願を提出していた。
阿子島さんは8月からレコ大審査委員長に就任。だが、10月下旬から「音楽業界有志一同」と名乗る人物から、阿子島さんがリベートや接待を要求しているとの怪文書が、夕刊フジを含めマスコミ各社へ再三、郵送やFAXで送りつけられた。
失踪の数日前、阿子島さんは都内での業界関係者との会合に出席。その席上、問題の怪文書について、「出した人間は分かっている。詳しいことは後日話す」と語っていたという。
阿子島さんは宮城県出身。昭和39年、早大第1文学部を卒業し、報知新聞社へ入社。文化部で芸能記者として活躍した後、47年に退社。音楽雑誌編集部などを経て、51年からフリーの音楽評論家として活動していた。
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全焼した阿子島さん宅の焼け跡から男性の遺体がみつかった16日、現場周辺の住宅街は大騒ぎとなった。
遺体は13日午後零時半すぎ、阿子島さん宅の玄関脇の庭から、神奈川県警のワゴン車に、ビニールシートで隠されながら運び込まれた。近所の住民らは不安そうな面持ちで遺体が運ばれるのを見守っていた。
近くに住む主婦(63)は「阿子島さんが事件に巻き込まれているのでは、というニュースを聞いて心配だった。火事から3日もたっているのに遺体が残っていたなんて怖い」とまゆをひそめながら話していた。
ZAKZAK 2005/12/16