医師法21条を「削除」―民主議員案
「医師法21条は削除する」―。医療事故の原因を調べる「死因究明制度」について、民主党の足立信也参院議員らの私案が6月12日までに明らかになった。病院内に設置する「事故調査委員会」や「医療対話促進者」(メディエーター)の役割を重視し、患者や遺族との対話による解決を図る。私案は、医療事故の調査と刑事手続きを明確に切り離す制度設計になっており、同制度に関する厚生労働省の第三次試案と根本的に異なっている。民主党の議員から“対案”が出たことで、同制度をめぐる議論がさらに深まりそうだ。(新井裕充、熊田梨恵)
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民主党の厚生労働部門会議が11日に開かれ、「死因究明制度」に関する足立議員らの私案(通称・患者支援法案)が了承された。私案によると、診察した患者が死亡した場合には、院内の事故調で原因を調査。その結果、「診療行為に関連して死亡した」と判断したときは、「死亡診断書」を患者の遺族に発行する。院内のメディエーターが死因を説明して遺族の納得がいけば、調査はここで終了する。
一方、遺族が医療機関側の説明に対して納得できない場合は、医療事故の原因を調べる第三者機関(医療安全支援センター)に届け出て、さらに専門的な調査を依頼できる。同センターは調査報告書を遺族に発行するため、調査報告書を刑事告発などの手続きに利用するのは遺族が中心となる。同センターから刑事手続きにストレートに移行させず、「事故の調査」と「刑事手続き」を明確に切り離す。
これに対し、厚労省の第三次試案では、事故調査に当たる「医療安全調査委員会」(医療安全調、仮称)が故意や重過失があると判断した場合は、刑事手続きに移行できる仕組みになっており、刑事責任追及への道が一連の流れの中で確保されている。第三次試案では、「医師法21条を改正して、医療機関が届け出を行った場合は、医師法21条に基づく『異状死』の届け出は不要」としているものの、医療安全調と刑事手続きをつなぐルートに連続性があるため、医療現場からの批判が絶えない。
また、第三次試案では、「医療機関が医療安全調に届け出るべき範囲が不明確」という問題点が根強く残っている。医療機関が死亡原因を特定できない事案をすべて医療安全調に届け出た場合、医師の行政処分や刑事責任追及が現在よりも増加する可能性があることを懸念する声もある。
これに対し、民主党議員の私案は、「異状死」を警察に届け出ることを義務付ける医師法21条の「削除」を盛り込んだ。警察への届け出の範囲を明確に限定し、「死亡診断書または死体検案書もしくは死産証書を発行できないときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」としている。院内の事故調やメディエーターなどの役割を重視し、できる限り医療機関と遺族との対話による解決を図る。
遺族との話し合いが決裂した場合に調査に当たる「医療安全支援センター」は、二次医療圏ごとに設置するとともに、同センターの上部組織として、「医療事故に関する科学的原因究明委員会」を各都道府県に設置する。第三次試案のように、医療安全調を中央省庁(厚労省または内閣府)に設置する案は採用していない。
更新:2008/06/12 22:36 キャリアブレイン
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