気象・地震

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

中国・四川大地震:識者に聞く 亡命チベット人医師・西蔵ツワン氏

 ◇自国客観視、意識変化後押し

 四川大地震で多くの人が亡くなり、非常に悲しい思いをしている。特に震源地となったアバ州は、人口の50%以上をチベット人が占める。

 チベット問題は、3月にラサで始まった中国政府への抗議行動や、北京五輪の聖火リレーを巡る騒動で世界の注目を集めた。大地震で埋もれた感はあるが、一時的なものだろう。この問題が今の中国指導部のやり方では立ち行かなくなることが明らかだからだ。

 中国政府は約50年前からダライ・ラマ法王を「国家分裂主義者で反逆者」などとののしってきた。だが、そんな人物が世界中で講演し、人々を魅了できるだろうか。

 以前、中国人医師に内視鏡の使い方を指導したが、彼らは「チベット人は野蛮で無学だと信じていた」と話した。中国政府の愚劣な政策の結果だが、一方で今、上海などで成功した人が、ラサで寺院に寄進したり、チベット仏教を学んだりしているという話を聞く。中国も社会の成熟につれ、心のよりどころを求める人が増えているのだろう。

 今回の地震では社会の格差や手抜き工事などが露呈した。政府は住民の不平不満の高まりを一番恐れているに違いない。76年の唐山地震では、死者数でさえ3年後に明らかになるなど、徹底した情報統制を行った。だが、今はそんなことのできる時代ではない。

 中国人もネットで世界とつながり、海外へも出かけ、自国を客観視できるようになった。国民意識が変われば、指導部も変わらざるをえない。今回の地震は、そんな「変化」を後押しするきっかけになると思う。

 (西蔵氏は62年に家族でインドへ逃れた。亡命政府派遣留学生として65年に13歳で来日。日本国籍を取得し、現在は埼玉県の武蔵台病院副院長)【聞き手・西脇真一】=おわり

毎日新聞 2008年6月13日 東京朝刊

検索:

気象・地震 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報