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2008年6月13日

◎モンスター保護者 校長中心に結束して対応を

 義務教育の学校や教師に理不尽な要求を繰り返す保護者を「モンスターペアレント」と いうが、石川県ではそうした保護者への対応に悩む教師が金沢地方法務局の人権擁護の窓口に相談を持ち込むケースが増える兆候が出てきたようだ。

 同地方法務局や県教育委員会などによると、保護者とのトラブルに苦しみ、法務局に相 談する教師はこれまでほとんどなかったが、一昨年に一件、昨年は四、五件になるなど、ここにきて増えてきたといわれる。

 中には、子どもがいじめに遭ったとして学校にクレームを付けた保護者への対応が、担 任教師一人に押しつけられて板挟みになったケースもあるという。

 が、地方法務局が教師の「駆け込み寺」になるのは好ましいことではあるまい。問題が 起きた場合、学校運営の責任を託されている校長を中心に、教職員が結束して対応し、よりよい解決を目指して努力してほしい。

 金沢地方法務局は相談した教師の名前なども含めて個々の事例を具体的に公表していな い。このため、どのような問題でトラブルになったのか。教師は保護者にどう対応したのか。同僚や校長に相談してみたのか―といったことが分からない。

 相談に至るまでにはいろいろな事情があったはずだ。

 しかし、どのような事情があったにせよ、法務局へ問題を持ち込んだという事実は、少 なくとも教師と保護者のトラブルを学校として取り組み、解決できなかったことを意味する。

 「和」を教え、人を大事にすることを指導する役割を担うのが学校である。問題が起き たら同僚や校長に報告し、速やかに組織的にうまく処理するために、つねに風通しをよくしておく努力が欠かせまい。孤立しやすい教師がいたなら、いっそうそうした努力が求められるのだ。

 学校以外の他の組織にしても、問題が起きやすい。トラブルがあるのが普通だともいえ る。が、それをプラスに変えるのがリーダーである。学校のリーダーは校長である。校長の踏ん張りを望む。

◎中台対話再開 緊張緩和は日本にも利益

 中国と台湾の交流窓口機関が十年ぶりにトップ会談を行い、関係改善を内外に印象づけ た。台湾海峡の緊張緩和は日本の利益でもある。台湾側が求める世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加や中台交流の拡大などについて、日本も一定の役割を果たしていきたい。

 中台対話は一九九二年に実質的にスタートし、九九年に中断した。当時の李登輝総統が 中台関係を「特殊な国と国の関係」と定義した、いわゆる二国論を主張したことが原因だった。対話再開は、中国に融和的な国民党の馬英九氏が台湾総統に就任したからだが、関係改善は口で言うほど簡単ではなかろう。

 四川大地震の余韻がさめやらぬなか、北京五輪に向けて明るい話題を提供したい中国と 、経済的苦境と国際舞台での孤立に悩む台湾にとって、関係改善は現状打破をアピールする格好のテーマである。トップ会談で、七月からの週末直行チャーター便の運航と中国からの台湾観光解禁が合意される見通しだが、台湾側はさらなる三通(交通、通信、通商の直接交流)の拡大や、中国が反対しているWHOへのオブザーバー参加の承認を求めてくるとみられる。

 台湾側からの踏み込んだ要求に対し、中国側が真正面からこたえられるかどうかが問わ れるだろう。もし中台関係が大きく前進するようなら、日中間の懸案となっている東シナ海ガス田開発問題の解決などにも良い影響を及ぼすのではないか。

 台湾にとって、中国への接近は難しい問題をはらんでいる。中国への輸出拡大や観光客 誘致は、苦境にある台湾経済を立て直すカンフル剤になる半面、国民の間で高まっている「台湾人意識」とのあつれきが深刻化し、国内世論を分裂させかねない。

 あくまで経済的利益を優先したい台湾側と、祖国統一を目指す中国側の思いは「同床異 夢」と言ってよく、日本としてはそうした思惑の違いを十分認識したうえで、できるだけ政治問題を棚上げし、安定した関係を構築できるよう側面支援していきたい。


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