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「水と空気だけで発電し続けます」,ジェネパックスが新型燃料電池システムを披露

2008/06/12 23:03

 ジェネパックスは2008年6月12日,水を燃料とする燃料電池システム「WES:Water Energy System」についての技術発表会を大阪府の議会会館で開催した(図1,2)。燃料極に水を,空気極に空気を供給するだけで発電できることから,CO2を排出しない。

 基本的な発電の仕組みは水素を燃料とする燃料電池と同じ。ただし,同社のMEA(膜/電極接合体)には水を水素と酸素に化学反応で分解させることが可能な物質を含ませているのが最大の特徴という。詳細は明かさなかったが,「昔から知られている水から水素を取り出す方式をMEAにうまく組み込んだ」(ジェネパックス 代表取締役 社長の平澤潔氏)とする。これは金属水素化物と水を反応させた際に水素が取り出せる仕組みと近い方式としているが,こうした方式よりも長期間,水から水素を取り出せるのが特徴とみられる。

 その結果,セルには水と空気を供給するだけで済み,水素の改質器や高圧の水素タンクなどを不要にできる。しかも,MEAには特別な触媒を使っていない上,白金などのレアメタルも従来の燃料電池システムとほぼ同じ使用量で済むという。

 このほか,メタノールを燃料とするダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)とは違い,燃料電池からCO2が発生しない上,燃料極側でCOによる触媒の劣化(被毒)が起こらず,長寿命化が期待できるとしている。寿命については試作してからまだ1年ちょっとしか経ておらず,これからデータを蓄積していくとのこと。

 発表会では定格出力120Wの燃料電池スタックと,同300Wの燃料電池システムを披露した。120Wの燃料電池スタックの実演では,最初に水を乾電池式のポンプで供給し,発電後はポンプを停止させて,パッシブ型として作動させた。その際の燃料電池スタックの電圧は25〜30V。燃料電池スタックは40セルを直列接続させているため,1セル当たりでは出力が3W以上,電圧が0.5〜0.7V程度,電流が6〜7A程度とみられる(図3)。セルの反応部分は10cm×10cmであることから,出力密度は30mW/cm2以上はあるもよう。

 一方,300Wの燃料電池システムは,水や空気をポンプで供給するアクティブ型である。実演ではこのシステムで鉛蓄電池を充電してテレビや照明に電力を供給させたほか,タケオカ自動車工芸の小型電気自動車「Reva」の電源として荷室に300Wの燃料電池システムを搭載して実際に走行させた(図4)。同社は実際には500Wのシステムにする予定だったが,MEAの材料が間に合わず,300Wの燃料電池スタックになってしまったという。

 今後の展開について,1kW級の発電システムを電気自動車や家庭などに供給したいとしている。電気自動車についてはこの発電システムだけで駆動させるのではなく,電気自動車の2次電池を充電する発電機としての利用を想定している。コストについては現状で200万円くらいだが,量産できれば1kW当たり50万円以下にできるとのこと。この製造コストを実現できれば,家庭用の太陽電池システムと競合できるとの見解を示した。

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