東京・秋葉原で今月8日、17人が死傷した無差別殺傷事件で、殺人未遂容疑で逮捕された派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)が5月下旬、派遣先の同僚に「多額の借金がある」と話していたことがわかった。
加藤容疑者は、この時期広まった派遣先でのリストラ情報に将来の不安を募らせていたほか、高校入学後、挫折を繰り返し、「人生が嫌になった」とも供述しており、警視庁ではうっ積したストレスが犯行の背景にあったとみて調べている。
派遣先の「関東自動車工業東富士工場」(静岡県裾野市)の同僚男性によると、加藤容疑者は5月下旬、工場で休憩中に突然、「多額の借金を抱えている」と打ち明けた。借金の原因については「車に関すること」とだけ話したという。
加藤容疑者は2006年から07年ごろ、当時乗っていたスポーツカーから別の車に乗り換えており、その理由について友人に「死のうと思って高速道路に突っ込んでつぶした」と説明していた。同じ時期、別の友人に繰り返し送ったメールでも「金がない」と嘆いていたという。
加藤容疑者は犯行直前の今年5月下旬、派遣元の日研総業(東京都大田区)から、近く派遣社員の大半の契約が解除されるとの見通しを聞かされていた。加藤容疑者は、日ごろから不安定な立場を気にしていたとみられ、同僚らは「急に大声を上げるなど、ストレスをためていたようだ」と指摘している。
6月に入り、加藤容疑者は自分自身はリストラの対象外だと知るが、事件3日前の同5日、作業服を隠される嫌がらせを受けたと思い込み、職場から無断で帰宅。同僚らは「必死になって作業服を探していた。頭に血が上って、パニックになっているように見えた」と話している。
一方、警視庁幹部によると、加藤容疑者は被害者に対し、「申し訳ないことをした」と話しているという。
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