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《錠剤型薬物(MDMA)とそのリスクを考える》

急速に世界の若者に広まり、
いま、最も警戒されている麻薬のひとつです。

[名称]
正式にはMDMA等錠剤型合成麻薬
略してMDMAとも呼ばれます。
[通称]
世界共通の呼び名はエクスタシー、XTCと標記されることもあります。
日本では、頭文字からX(エックス)、バツと呼ばれたり、
その形状からマル、タマなどと呼ばれています。


どんなものか
1980年代から欧米で乱用が広まり始めた薬物で、主な成分としてMDMA、MDA、MDEAなどの合成麻薬を含む錠剤です。
平均して1錠が0.3グラムくらいの小さな錠剤で、さまざまな色に着色され、表面にはロゴマークが入っています。多様なバラエティがあり、色、形、表面の模様の違いとともに、含まれている成分やその配合も実に多様です。
いま、日本で出回っている錠剤型薬物で典型的なものが、MDMAを主な成分として含有するものです。また、少数ですが、覚せい剤を主な成分とする錠剤もあります。しかし、成分の違いは見た目ではわかりませんし、若者は錠剤型薬物を総称してエックスなどと呼んでいます。

複数の成分が配合された薬物のカクテル
錠剤に含まれる活性成分には、MDMAという合成麻薬の仲間、麻酔作用のある麻薬ケタミン、アンフェタミンやメタンフェタミンなどの覚せい剤の仲間、カフェインと多彩です。MDMAだけの錠剤もありますが、こうした成分が多いもので3~4種類、しかもかなり大量に入っているものが出回っています。
覚せい剤とMDMAは化学的によく似た構造をしていますが、このように似たものどうしを配合すると、その作用の強さは、相乗的に高まります。単独でも強い作用を持つ薬物が、数種類混ぜ合わされることで、危険性が格段に大きくなり、実際に激しい急性中毒などの例もあり、死亡事故も報告されています。
  • 急性中毒による事故が起きており、外国では重症例や死亡例も報告されています。
  • 使用後に強い副作用が現れることがあります。
  • 主な成分であるMDMAには強い精神作用があり、脳に障害を及ぼす危険が指摘されています。
どんな成分が含まれているのか
「日本で押収されたエクスタシー錠剤のプロファイリング[1]」として、わが国で実際に押収された錠剤型合成麻薬を分析し、含まれている成分とその量をまとめあげた研究によれば、1錠中に2種類以上の精神作用成分が含まれる錠剤が多数みつかりました[2]
分析では、次のような成分が確認されました。外国の情報では、強力な幻覚作用のある麻薬を含むものなどの報告もあります。錠剤型麻薬には、次々に新しいタイプが現れていて、そこに含まれている薬物の種類も量も、実に多様です。外見からは、どんな危険が潜んでいるか予測できないのです。
MDMAなどの麻薬  
MDMA、MDA、MDEAなどの麻薬の含有が確認されています。いずれも幻覚作用と興奮作用をあわせ持つ麻薬です。大量に摂取すると神経細胞にダメージを与えることがあります。
覚せい剤の仲間と覚せい剤原料  
覚せい剤を主な成分とする錠剤も出回っています。また、MDMAと覚せい剤の両方が入っているものもありました。覚せい剤の原料であるエフェドリンという成分も見つかっています。覚せい剤には神経を興奮させ、また体温を上昇させる作用があります。 
麻酔作用のある麻薬、ケタミン   
人や動物の全身麻酔に使われる麻酔薬で、単独でも乱用されることがあります。生々しい悪夢、幻覚、錯乱、落ち着きのなさ、不眠、めまい、悪心、嘔吐、唾液の分泌過剰などの副作用があり、死亡事故も報告されています。その他 カフェインが確認されています
  • 麻薬や覚せい剤など4、5種類の成分を含むものもあります。
  • 一般的な摂取量の2倍近い量のMDMAが含まれていました。
  • 強い神経毒性があるMDAを主成分とするものも見つかっています。
  • 化学的によく似た2種類以上の麻薬を含むものが多数あります。
MDMAという麻薬は
薬理作用
MDMAは脳内でドパミン神経系やセロトニン神経系に作用します 。MDMAを摂取後、使用者は気分の高揚を経験し、また自信や感覚的鋭敏性の増加、洞察・共感・親密感を伴う平穏な感情、食欲の低下などを経験します[3]
さらに、MDMA使用による不快反応、精神異常発現効果、精神病状態も報告されています。頻脈、動悸、血圧上昇、発汗、歯ぎしりなどの交感神経作用がよくみられます[4]
健康影響
MDMA使用によって、睡眠障害、気分の障害、不安障害、衝動性の亢進、記憶障害、注意集中困難などが長期にわたって続くことがあるとされます。また、大量に摂取すると、知覚および行動への作用に加え、不整脈、高体温などにより、重大な症状を引き起こすことがあり、横紋筋融解症、低ナトリウム血症、急性腎不全などで死に至る場合もあります。
MDMAには、体温を上昇させ、血圧をあげる作用があり、これを摂取して激しいダンスを長時間続けることで、熱中症状態になりやすく、外国では、高体温による死亡例も多数あります。アルコールと併用すると、危険性はさらに高まります。さらに、オーバー・ヒートした体が水分を要求し、水分のとり過ぎから低ナトリウム血症を起こす例もあり、死亡事故も報告されています。
神経毒性に関する研究
MDMAは神経細胞に重大な損傷を与えるという報告があります。MDMAの神経細胞に対する毒性に関して、わが国で行われた実験研究では、高濃度のMDMAは神経細胞に損傷を与え、細胞死をもたらしうることが明らかにされました。さらに、MDMAあるいはメタンフェタミンと5-MeO-DIPTを同時併用すると、細胞毒性は相乗的に増強されることも報告されています[5]
霊長類による動物実験では4日間のMDMAの使用が6、7年後も脳に障害を与えていたことが報告されており[6]、神経細胞の損傷は回復しない可能性があります。
生活の変化
MDMAを使用する大学生に関する大がかりな調査では、MDMAを使用していない学生に比べて、MDMAを使用する学生には次のような傾向が有意に認められるとしています。大麻の使用、アルコールのメチャ飲み、喫煙、複数の異性との性交渉、芸術やパーティーを重要と考える傾向、宗教の重要性を認めない傾向、友人とより多くの時間を過ごし、勉強に費やす時間が少ない、など。いっぽう、他の規制薬物と違って、MDMAの使用者は成績の面で劣ることはないという結果も出ています。[7]

高校生とMDMA
MDMAは、10代後半から20代前半の若者を中心に広まっています。警察庁の発表[8]によると、平成19年中にMDMAで検挙された人のうち、少年及び20歳代の若年層が6割強(62.8%)を占めています。高校生の検挙人員は3人と少ないものの、検挙者の中心が20歳代であることから、高校生への指導・対策がとくに重要だと思われます。
MDMAの乱用は、高校生の生活のすぐそばで広まっているのです。 

ダンスや音楽との関係
MDMAは音楽イベントや、ダンスクラブという場面で、そこに集まる若者に広まり、トランスと呼ばれる音楽や、レイブと呼ばれるダンスパーティーでは、MDMAを使う若者が多いといわれています。
MDMAには、覚せい剤と似た興奮作用があり、激しいダンスを続けても疲れを感じることなく、盛り上がることができ、また、特有の作用によって音楽に対して敏感になったり、他人と打ち解けた気分になることから、音楽やダンスを楽しむ場面で使われることが多いのです。
もちろん、音楽イベント、ダンスや野外パーティなどに参加する若者のほとんどが、薬物と無縁であり、薬物を使うのはごく少数です。こうした場への参加をむやみに禁止することは行き過ぎでしょうが、生徒に対して、こうした場では薬物に警戒し、誘われて軽率に使ってしまうことのないよう、指導しておきたいものです。
  • MDMAは、激しいダンスをしながら乱用されることが多く、大量に摂取するとMDMAの興奮作用のために、高体温になり、横紋筋融解症となってミオグロビンが血中に解け出して、腎不全になることがあるなど、死亡例も報告されています。
  • 重大な健康被害事例の多くは、熱狂した音楽イベントや、深夜に及ぶダンスの場で起きています。
MDMAの取り締まり
錠剤型薬物には、麻薬や覚せい剤が含まれていますから、これを持っていたり使ったりすることは、「麻薬及び向精神薬取締法」や「覚せい剤取締法」の所持罪、使用罪にあたります。いずれの法律でも、麻薬、覚せい剤の所持や使用は禁じられており、違反者に対しては厳しい罰則が定められています。実際に、麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕される若者の大半は、ほんの1錠のMDMA錠剤を所持していた例や、尿検査の結果使用していたことがわかったという例です。
■薬物乱用を取り締まりについては、当サイト内の、「薬物乱用と犯罪防止―法は何を禁じ、どんな処罰を定めているか 」をご参照ください。


《出典》
1 Yukiko Makino et al. “Profiling of Illegal Amphetamine-type Stimulant Tablets in Japan” Journal of Health Science, 49 129-137 (2003)
Yukiko Makino et al. “Profiling of Ecstasy Tablets seized in Japan” Microgram Journal, 1 169-176 (2003)
2 「薬物の分析鑑定法の開発に関する研究(平成18年度厚生労働科学研究)」
3 井上令一ほか監「カプラン臨床精神医学テキスト第2版」メディカル・サイエンス・インターナショナル(2004) p.460
4 NIDA,”MDMA  ABUSE” Research Report http://www.nida.nih.gov/ResearchReports/MDMA/
5 舩田正彦ら「MDMA及び脱法ドラッグの神経毒性ならびに精神依存発現メカニズムの解明」、平成15年度厚生労働科学研究(2004)
6 Persistent neuropsychological problems after 7 years of abstinence from recreational Ecstasy (MDMA): a case study. Soar K, et.al. Psychol Rep. 2004 ;95(1):p.192-6.
7 "increasing MDMA use among college students: results of a national survey." J Adolesc Health 2002 Jan;30(1):64-72
8 警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編「平成19年中における薬物・銃器情勢」(2008)p.8
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h19_jyousei.pdf

監修 小沼 杏坪(精神科医師)
執筆 小森 榮 (弁護士)  大久保圭策(精神科医師)  原田 幸男(教育評論家)
写真提供 厚生労働省 関東信越厚生局 麻薬取締部
2005年6月第1稿掲載  2008年5月改定 
麻薬及び向精神薬剤取締法は、一般の人が麻薬を所持したり使用したりすることを厳しく禁じています。違反した場合は、未成年であっても逮捕され、少年審判などを受けることになります。このサイトの「薬物乱用を取締まる法律」では、法律が何を禁止し、どんな処罰を定めているか、くわしく説明しています。