悪質なヤミ金融から借りた金は返す必要がない--。指定暴力団山口組旧五菱(ごりょう)会系のヤミ金融事件を巡る損害賠償を求める訴訟で10日、最高裁は利息分だけでなく元本分も返すべきだとの初判断を示した。ヤミ金融問題に取り組む関係者は「ヤミ金を締め出す大きな一歩」と評価している。
県暴力追放県民センターの舞沢正志専務理事は「『借りた金は返す』という弱みもなくなり、今後は『返さなくて良い』と指導できる」と説明する。多くの相談者が「違法に借金している」と思い悩み、対応が後手に回ってしまう現状があるからだ。
同センターによると、ヤミ金融などの07年度相談件数は69件で、前年度よりも7件増。改正貸金業法で上限金利が下がるが、審査基準が厳しくなる傾向にあるため、今後は多重債務者が消費者金融からヤミ金融に流れる恐れもある。舞沢専務理事は「ヤミ金は、返金し終わっても理由をつけて関係を続けようとするが、きっぱり関係を切れる状況になった」と話す。
ヤミ金融問題に取り組む山崎泰正弁護士も「ヤミ金対策は『返さない』のが唯一の解決策。警察の摘発と共に、経営を成立させないことがヤミ金根絶に重要」と強調した。【藤原章博】
毎日新聞 2008年6月12日 地方版