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2008年05月23日 週刊ダイヤモンド編集部

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今枝仁弁護士が語る光市事件の教訓
「裁判員制度は法曹界を変える!」

――今回、死刑判決を出した裁判官は、世論に流されたと思うか。

 裁判官に世論の影響はまったくなかったと思う。影響があったとすれば、最高裁の判決内容と本村さんの意見陳述だろう。

 最高裁判決の結論部分に「死刑の選択を回避するに足る特に斟酌すべき事情があるかどうか、さらに慎重な審理を……」とある。私はこれを「本村さんの意見に耳を傾けろ」という意味に受け止めた。被告人が友人宛に書いた不謹慎な手紙など無反省な態度について、「遺族にきちんと謝罪しろ」というメッセージだ、と。ところが、弁護団も被告人もまったく逆の態度を取ってしまった。裁判所をバカにした弁護士は当然負ける。

 2007年9月20日の本村さんの意見陳述の後、被告人が真摯な態度で本村さんに向き合い、少しでも被害感情を和らげることを言っていれば、“死刑を回避する特段の事情”になったと思うが、残念ながらそうならなかった。あれで勝負は決まった。

 (編集部注:本村洋氏の意見陳述を聞き、開廷中にもかかわらず今枝氏は号泣してしまう。その後の記者会見でも「この事件の弁護の過程でご遺族を傷つけてしまったとしたら、率直にお詫びしたい」とまた慟哭し、“泣き虫弁護士”として有名になった)

――それにしても、一般の裁判員が今回のような難しいケースを正しく裁くことなどできるのだろうか。

 裁判員は国民の代表なのだから、普段のままでよい。人の心がわからない人なら、そのまま出てくればいい。問題は裁判官がそんな人々をどう説得するか。つまり、裁判員が裁判を変えるのが目的ではない。裁判官が、また弁護士や検察官が、この制度によって変わればいいのだ。

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