5月の米国雇用統計が発表された。雇用者数は5カ月連続で減少し、失業率は5・5%へ急上昇した。同時に原油価格も急騰し、米国経済の先行きに関する楽観論はしぼんだ。
振り返れば、サブプライム危機が表面化した昨年夏以降、楽観的な見方は幾度も現れ、その都度、現実によって覆されてきた。
FRBが利下げをすれば景気はすぐ回復するという願望は、クレジット・クランチによって、裏切られた。家計資産の増大が、過剰債務とその調整に伴う支出抑制という悪影響を吸収するという見方は、住宅価格の下落によって、説得力を失いつつある。また、家計に代わり経済を支えると期待された企業も、収益の悪化に直面している。減税の消費刺激効果も、原油高による購買力の低下によって減殺されている。
以上のような事実は、米国経済の変調が構造的であることを示している。それは米国が、2000年代以降の行き過ぎた信用膨張と資産価格上昇に基づくバブルの清算を迫られる中で、現在の経済低迷が生じているということである。実際、2000年以降の民間非金融セクターにおける債務残高のGDP比率の上昇幅は、日本のバブル期を上回る大きさであり、その調整が軽微では済まない可能性を示唆している。
また、これまで米国が享受してきた、低インフレ、ドル高というグローバリゼーションの利益は、現在では原油・資源高、ドル安、インフレ圧力の高まりという逆風に変わってしまった。原油・資源輸入額のGDP比率は、過去の石油ショック時の水準をすでに大きく上回っている。
米国経済は、トンネルの出口すらまだ見えていない状態にあるとみるべきではないか。(山人)