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【社説】

締まらぬ国会 たかが問責されど問責

2008年6月12日

 野党が参院で福田首相の問責決議を可決した。首相の問責は初めてだ。ただし法的拘束力はなく、首相も与党も無視する構えだ。確かに「たかが問責」かもしれないが、政権へのダメージは大きい。

 「国民の生活実感を理解せず人任せにしている」−。福田康夫首相問責決議案の趣旨説明に立った民主党の輿石東参院議員会長はこう言い放った。お年寄りから猛反発を買った後期高齢者医療制度。その廃止法案が参院で可決されたにもかかわらず、衆院で拒み続ける姿勢を、問責の理由の一つに掲げた。

 ガソリン値下げを覆す法案を衆院で再可決した、宙に浮いた年金問題がいまだ解決していない、などの「失政」も批判した。問責に反対する自民党議員は「許し難い暴挙を行う民主党こそ問責に値する」と声を荒らげた。

 与党側が指摘するように、立法府での対応を理由に、行政府の長の責任を問うのは理屈としては苦しい。しかし総選挙の洗礼を受けていない、20%割れの支持率にあえぐ政権に対し、一院が民意を背景に「退場」を求めた意味合いは重い。ねじれ国会で予想された野党なりの「けじめ」である。

 問責は衆院でいえば内閣不信任のようなものだ。首相は負い目を抱きながら政権運営を余儀なくされる。むろん内閣不信任と違い、内閣総辞職か衆院解散に追い込まれることはない。歴史的瞬間となった参院本会議が緊迫感に欠けていたのも、このためだ。

 問責決議を受け、民主党は国会審議を拒否する方針だ。決議に先立ち、国民生活に密接にかかわる法律を駆け込み成立させたのはせめてもの良識と受け止めたい。

 首をかしげる点はある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と結ぶ経済連携協定(EPA)に衆院では賛成したが、参院では防衛省汚職事件の解明を盾に、審議に応じなかった。さらに解せないのは、党首討論が見送られたことだ。小沢一郎代表が首相と堂々と論戦し、政権側の非を明確にした上で、問責決議案を提出すべきではなかったか。党内にも不満がくすぶっている。

 与党は対抗する形で十二日、首相信任を衆院で決議する。十三日にはEPAなどの条約を自然承認させるため、会期を二十一日まで延長する手続きを取るが、国会は動かない。何とも締まらない光景だ。政権の信任か、不信任か−。ここまで来たら判定するのは有権者しかないのではないか。

 

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