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【主張】北の反テロ声明 指定解除急ぐのは危険だ
日本と北朝鮮の公式協議が9カ月ぶりに始まった。これに先立ち、北朝鮮はあらゆる形態のテロとそれへの支援に反対する声明を発表した。
この反テロ声明は、米国が北をテロ支援国家の指定リストから外すための条件の一つとして求めていたものだ。米国務省には歓迎する声もあるが、北が本気でテロ放棄を考えているとは思われない。指定解除を狙った米国向けのポーズとみるべきだろう。
北はこれまで、韓国閣僚らを襲ったラングーン爆弾テロ(1983年10月)や乗客・乗員115人が犠牲になった大韓航空機爆破事件(1987年11月)などのテロを実行してきた。これら犯行を認め謝罪しない限り、国際社会は北の反テロ声明を信用できないのではないか。
米国は、北をテロ支援国家とみなす理由に、1970年に日航機の「よど号」をハイジャックした犯人グループをかくまっていることも挙げている。「よど号」犯の1人は、有本恵子さん拉致に関与した容疑で国際手配されている。だが、「よど号」犯が日本に引き渡されても、被害者の有本さんらが帰国しなければ、拉致問題が進展したとはいえない。
ブッシュ大統領は2年前、拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんと面会し、「信じがたいのは、(北朝鮮が)国家として拉致を許したことだ。拉致問題解決への働きかけを強めたい」と語った。これは、北の拉致を絶対に許さないという米国の強いメッセージだった。
米国は、指定解除には核計画の完全かつ正確な申告や核施設の無能力化も必要だとしている。米下院は先月、指定解除に厳しい条件を付け加える武器輸出管理法の修正案を可決した。確たる裏付けのない北の反テロ声明で、安易に指定解除の手続きを急ぐことがないよう、米国に重ねて求めたい。
日朝協議に向け、高村正彦外相は北が拉致問題で「大きく一歩踏み出した具体的行動」をとれば、日本も前向きに対応する意向を示した。具体的行動とは、まず拉致被害者を日本へ帰すことだ。
初日の協議では、そのような大きな進展はなかった。日本政府は「拉致はテロ」との認識を持ち、拉致問題の進展がない限り、エネルギー支援などの経済支援には応じないというこれまでの強い姿勢を崩すべきではない。