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社説:問責決議可決 民主は自ら手足を縛るな

 民主党などが提出した福田康夫首相に対する問責決議が11日、参院本会議で可決された。首相への問責決議の可決は史上初めてで、その意味を軽んじるべきではない。ただ、時期や狙いは適切だっただろうか。疑問が残る。

 毎日新聞は衆参のねじれの下、国会の機能不全状況を解消するために、できる限り早く衆院解散・総選挙を行うべきだと主張してきた。民主党も問責決議で早期解散に追い込むとアピールしてきたはずだ。だが、今回、そんな切り札となるだろうか。

 問責決議は文字通り、福田首相の責任を問うというもので、可決は参院として福田政権は認めないという意味にはなろう。

 しかし、憲法の規定に基づいた衆院での内閣不信任案と違い、問責決議には法的拘束力はない。このため、福田首相は決議を無視し、総辞職も衆院解散もしない構えだ。それを承知で、民主党がこの時期に踏み切ったのはなぜか。

 小沢一郎代表は、国家公務員制度改革基本法で与党と民主党の妥協が成立し、対決ムードが薄らいできたことに不満だったのかもしれない。だが、仮に党内の引き締めといったお家の事情を優先したとすれば、筋が違うと言うべきだ。

 もっと不可解なのは、小沢代表と福田首相の党首討論が元々予定されていた11日に提出したことで、討論が見送られてしまったことだ。今国会での討論はまだわずか1回。まさか、討論を避けたかったわけではなかろう。せめて首相と白熱した議論を戦わせた後に出すべきだった。

 民主党は決議の理由として、後期高齢者医療制度の廃止要求に与党が応じない点などを挙げた。与党が敗北した沖縄県議選に見るように、同制度への国民の批判は一段と強まっており、与党内にも不満がある。ならば国会審議を通じて制度の欠陥をとことん追及して廃案、あるいは凍結に追い込む方法もあるはずだ。

 民主党は今後、審議に応じないという。対する政府・与党は国会の会期を21日まで延長する方針だ。条約の承認を目指すというのが理由だが、そこには民主党の審議拒否戦術に世論の批判を集める狙いがあろう。

 参院での問責決議に対抗し、衆院で内閣信任案も可決する予定だ。このままでは与野党が対決の演出にのみ力を注ぎ、議論しない国会が続く可能性がある。

 民主党内にはいったん問責決議を可決した以上、8月召集が予定される臨時国会以降も審議に応じないとの考えもある。しかし、それは国民の期待に応えるものだとは思えない。

 決議に法的規定はないのだから、むしろ、何度でも提出するくらいの柔軟さが必要だ。自ら手足を縛ることはない。今後も堂々と審議をし、解散・総選挙を目指すべきである。

毎日新聞 2008年6月12日 東京朝刊

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