およそ十年ぶりに来ましたが、やはり美しい。玉野競輪場。高い位置に設置してある観覧席から眺めると、競走する選手の背後に海が見え、実に鮮やかです。先日、足を運び、久々に雰囲気を堪能しました。
六日付全県面で、玉野競輪の現状をお伝えしました。「(三井)造船と競輪」と呼ばれ、玉野市の財政を支える柱だった事業も、今は売り上げが激減。最盛期には十億円以上を市の一般会計に繰り入れていましたが、二〇〇六年度は五千万円まで落ち込んでいます。
市も入場料の無料化や景品プレゼントなど知恵を絞っていますが、飛躍的な入場者増には結びついていません。場内もお年を召した観客が目立ち、若者は少なく…長年のファンとしては、少々寂しい気持ちです。
競輪の最大の特徴は、何といっても人間くささでしょう。玉野では、山道や幹線道で競輪選手をよく見かけます。競走用自転車にまたがり“もがいて”いる姿や、タイヤを引いている姿などは迫力満点。馬やモーターを利せず、人力だけで生み出す時速六十キロ超のスピードや激しい競り合いは、厳しい鍛錬のたまものなのです。
ギャンブルというイメージが先行しがちな競輪ですが、北京五輪でも「ケイリン」は正式種目。スポーツとしての見どころも多いのです。市もイベントや施設改修を通じてPR強化の方針。ファンとして、地元記者として、もっと競輪の魅力を知ってほしい…とはずれ車券を片手に、強く思いました。
(玉野支社・高木一郎)