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内田樹さんにインタービュー
ブンガク好きを魅了してやまない村上春樹。大好き!だけどちょっぴり難解……なハルキワールド。『村上春樹にご用心』の著書もある内田樹さんにハルキワールドを読み解くヒントについて、熱く語っていただきました。これを読めば、「目からウロコ」でハルキがわかる!!

●ハルキワールドを読み解く鍵
探偵小説である

 2006年10月に村上春樹はカフカ賞をもらっています。で、カフカの『城』と、村上春樹の小説は、ちょっと似ている、という話をその時にしているんです。
 断片的にしか情報が与えられていない状況に放り込まれた主人公が、自分の身に一体何が起きているのか、どんな事件の中に自分は投じられているのか、さまざまな手立てを尽くして、探ろうとする。
 その過程で、いろんな人に出会って、助けられたり、妨害されたりしているうちに、次第に自分が巻き込まれている巨大な事件の一部分がわかってくる。
 そして、それまでばらばらだったピースが、カチカチとはまって、読者はある種の爽快感を獲得するのですが、半分以上のピースは依然として暗闇に包まれたままです。決して、すべてが明らかになるということはないのです。
 これは、いわゆる探偵小説と、同じ構造なんですね。
 ミステリーだと、最初に殺人事件が起きて、事件の動機があって、犯行の手口がわかり、犯人がどういうパニッシュメントを受けたか、と一通りの話があって完結するんだけれど、探偵小説というのは、探偵が茫然自失して終わるということが頻繁に起こります。  たしかに探偵は部分的には問題を解決したけども、それによって少しも彼は幸福になっていないし、むしろより大きな謎の中に取り残されてしまう、というような。
 総じて文学の目的は、最終的に何かを発見することではないわけですから。村上春樹の世界も、失踪がおこって、旅に出ますが、その旅の終わりに何かを発見することはないのです。
 こういった世界観は、カフカ以降の作品世界、たとえばレイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、ポール・オースターの初期作品、村上春樹の作品には共通していると思います。

●ハルキワールドを読み解く鍵
「物語」の原型である

 ウラジミール・プロップという、二〇世紀のロシアの物語学者——構造主義の元祖みたいな人です——がロシアの民話を2000ほど集めて、構造分析をしました。
 その『民話の形態論』によると、彼がチェックした民話に関しては、登場人物は7種類しかおらず、物語を構成する要素は31だというのです。「家族の失踪」とか、「探索」とか、「移動」とか。それがずらっと並んでいて、並んだ順に、物語が展開してゆく。
 31の要素のいちばん最初にくるのが、家族の誰かがいなくなる、というもので、物語のすべてはここから始まる。
 親しい誰かがいなくなって、その失踪した誰かを訪ねる旅に出る話というのは、おそらく人間がつくったもっとも古い物語パターンなのですね。そして人間がいちばん愛する物語のかたちなのでしょう。
 RPGですと、お姫様がさらわれ、主人公である勇者がやってくる。探索を命じられ、旅に出る。「贈与者」がやってきて、秘密の魔術的な道具を与える。空飛ぶ馬とか、ボートなどを与えて、主人公の探索を支援していく。
 主人公は、城に行ってドラゴンと闘って、最後にお姫様を手に入れる。普通だったらここでおしまいですが、長い話だと「にせの主人公」というのが出てきて、主人公のアイデンティティの危機が次のヤマ場になる。
 漫画のストーリーも、作者が意図していないにもかかわらず、「民話の構造」をそのままなぞっていることが多い。お姫様を探す勇者も、聖杯を探す騎士も、失踪者を探す私立探偵も、村上春樹の主人公たちも、物語の原型的なパターンを刻印されている点では変わらない。

●ハルキワールドを読み解く鍵
父なき世界

 「父」というのは社会学の術語では「聖なる天蓋」ともいわれます。社会の秩序を保証してくれる人のことです。「父」はさまざまな様態をとります。一神教の世界では「神」であり、ヘーゲルの「絶対精神」も、マルクスの「歴史を貫く鉄の法則」も、いずれも秩序の最終保証人として「父」の機能を果たしています。
 私たちには秩序の断片だけしか見えないけれど、定められたやり方に従って探索すれば、巨大な秩序を維持する「聖なる天蓋」に到達できる、というのが「父」のいる世界です。
 文学にはこの父の秩序に対する戦いをテーマにしたものが多い。これは逆に言えば、秩序を常に意識している、権力コンシャスネスというか、天蓋に対する意識を強化してしまう。
 村上春樹文学には、「父」がいません。また、具体的な親子関係というのも小説中にほとんど登場しません。親が出てきて、「僕」の生き方にあれこれ干渉したり、支援してくれたとか、自分の邪魔をする話もないですね。また、主人公に子どもがいるという設定も、『国境の南、太陽の西』ぐらいで、ほとんど見られない。しかし、親によって生き方をはなはだしく損なわれている人たちはいっぱい出てきます。
 村上春樹的な「父なき世界」は、もしかすると世界には、局所的にしか秩序がないのではないか、という不安な意識を生み出します。すべてを解決する魔法の鍵のようなものには決して出会えなくて、秩序というのは自分たちが作っていかないと消えてしまう、無秩序のなかの局所的なコスモスでしかないのではないか。

高里椎奈スペシャルインタービュー
メフィスト賞を受賞した1作目からファンの心を捉えて離さない「薬屋探偵」シリー ズ。主人公は、表向きは薬屋を営む三人組……その正体はなんとチャーミングな妖怪 たち! 著者の高里さんご自身に、読みどころを語っていただきました。

きっかけは、デビルマンとホームズ
——デビュー作『銀の檻を溶かして』から始まるシリーズ「薬屋探偵妖綺談」(以下「薬屋」)は、主役が妖怪三人組のミステリーですが、一見ミスマッチにも思える「妖怪」と「ミステリー」を組み合わせようと思ったきっかけを教えてください。
高里 「薬屋」を書くまで、小説らしい小説を書いたことがなかったんです。だから初めて書こうとなったときに、自分が好きなものをいっぱい詰め込みたいと思って。私、二次元で一番最初に一目惚れしたのがデビルマンなんですよ。
——デビルマン!?
高里 え、ヘンじゃないですよね?(うろたえる) 幼なじみの女の子にも誰にも正体を明かさずに、たった一人で悪と戦っているんですよ? 幼稚園か小学校低学年のころにTVアニメ版のデビルマンを観て、むちゃくちゃかっこいいと思ったんです。これが入り口になって『ゲゲゲの鬼太郎』『妖怪人間ベム』と、二次元の好みは完全に、正義の味方だけど表立っては評価されない「人間じゃないもの」にいきました。それとほぼ同時期に、俳優のジェレミー・ブレットが演じていたTVドラマのシャーロック・ホームズにもハマっていたんです。
——なるほど。ただ、それを小説にするのは大変だったのでは?
高里 書いている間は特に。逆に、周りの友達から「妖怪だったらなんでもアリなんだからミステリーなんて成立しないじゃん」と言われて、そういうものなのかと驚きました。
——人間では不可能な力を使えるから通常のトリックが成立しない=ミステリーではないと、考えてしまうのかもしれません。
高里 たとえば『デビルマン』って、人前で変身しちゃいけないとか、制約が多いじゃないですか。もしかしたら人間よりも、人間の世界にまぎれた「人間じゃないもの」のほうが制約は多いかもしれなくて。ポピュラーな例をいうと、ヴァンパイアは太陽にあたっちゃいけないとか、彼らなりのルールに縛られているので、けっして「なんでもアリ」の世界ではないんです。
——「薬屋」をたっぷり楽しみたかったら、人間だけの世界のルールに縛られていてはいけませんね。それでは、妖怪でミステリーを書こうと思った次は、どんなふうに「薬屋」ワールドを創っていきましたか。
高里 う〜ん、どうだったんだろう……。
——頭の中に流れる映像をそのまま書き起こしているそうですが、本当ですか?
高里 そうなんです。だから登場人物やストーリーをどうやって考えましたかとよく訊かれるんですけど、自分で考えて作ったことがないから、うまく答えられなくて。
——気づいたら頭の中に「薬屋」の世界があって、映像が流れていた?
高里 そうですね。(しばらく考えてから)最初は登場人物たちが存在していました。お茶を飲んだり、事件とはまったく関係なく彼らが動いているシーンがありますが、ああいう感じ。そこに「こういう事件が起きちゃったよ」と、彼らとは別に存在していたミステリーの世界を渡したら、彼らが勝手に動き始めた。それが「薬屋」です。
——「薬屋」を書いていて楽しいのはどういうシーンですか。
高里 一番最初と一番最後が楽しい。なんかダメダメな答えですね(笑)。最初は怖いこともまだ起きてない日常シーンだから楽しいし、最後はそこが一番伝えたかったシーンだから、やっぱり楽しい。
 逆に詰まってしまうのは、書いたものを読み返して、話の流れが変だから……私が無理に彼らを動かそうとしているから直さなきゃいけないのに、どう直せばいいのかがわからないとき。そういうときは一切書くのをやめて、一人でどこかに出かけちゃいます。ひたすら車を運転し続けたり。そうやって一気に普段の自分から離れると、できない、わからないと思っていたはずなのに戻りたくなるんですよね。戻ると、なんであんなにつっかえていたんだろうと思うくらい、スッと話が流れたりして。
——講談社ノベルスでは、シリーズ第一部「薬屋探偵妖綺談」が終わり、第二部「薬屋探偵怪奇譚」がスタートしています。デビュー当時、こんなに長いシリーズになると考えていましたか。
高里 全然。こんなに長く書かせていただけるとは思ってもみませんでした。おもしろかったですとか、好きですと言ってくださる方のおかげですね。ありがとうございます。そういううれしい言葉はどれも心に残っていて、この人たちが読んでくれるから書いていこう! って。極端な話、もし本という形がなくなったとしても、一人でも読みたいと言ってくださる方がいるのであれば、なんとかして提供したいという気持ちがあります。幸い「薬屋」は文庫にまでしていただけて、本当に幸せです。
 

中島駆 薬丸岳の魅力
『天使のナイフ』では「少年の犯罪」、『闇の底』では「性犯罪者の再犯」。現代社 会に潜むものの、現行法では裁ききれない犯罪をテーマとしてきた薬丸岳。最新作 『虚夢』のテーマも「刑法三十九条」。様々な意味でハードルの高いテーマを冷静に 描ききった力作だ。書評ライター・中島駆氏が、更なる深まりを見せる薬丸岳の世界 を案内する。
 『虚夢』は「刑法第三十九条」をメインに据えた重厚な社会派サスペンスである。第51回江戸川乱歩賞受賞作『天使のナイフ』で「少年法」の不備を突き、続く『闇の底』では、子供を狙う悪質な性犯罪者が野放しになっている実態を浮き彫りにしてみせた著者は、この新作で「精神障害者による犯罪」という、またしても重いテーマへと挑んだ。冷静な筆致で、現行法上で起こりうるであろう人間ドラマの様相を、多角的な視座で提供する。その手法は、過去の薬丸作品にも見られる最大の特徴でもある。重苦しく、かつ、忌避してしまいがちなテーマを真正面から見据える真摯な姿勢は、今作でも健在だ。
 物語は主人公である三上の妻・佐和子とその娘が、通り魔殺人に遭遇する場面から幕を開ける。この事件で、犯人の藤崎は無差別に12人を殺傷。三上の娘も殺害され、佐和子もまた大怪我を負う。しかし藤崎は、起訴前鑑定で統合失調症と診断され、不起訴処分となる。事件のショックから立ち直れず、奇行の目立つようになった佐和子と三上は離婚。だがそれから4年後、三上のもとに佐和子から「あの男とすれ違った」という連絡が入る。はたして佐和子の証言は真実なのか? それとも幻覚なのか? 現実と虚ろとがない交ぜとなったストーリーは、まるで精神障害者の内奥を反映しているかのようで、読む者の心まで不安に陥れる。
 統合失調症の場合、「了解不能」という、健常者には追体験できない高い壁が存在する。
 その壁と対峙する三上の姿が、本作の大きな読みどころのひとつである。だが、それだけで終わらせないところが、この著者の卓抜した才といえるであろう。娘を殺めた藤崎に対する憎しみから始まる物語は、やがて統合失調症と診断される佐和子の悲劇へとスライドしていく。佐和子が殺人犯と同じ病であることを知ったことで三上は、彼女が被害者側から加害者側へと転じる不安に慄くこととなる。被害者が加害者へと反転してしまうこの構図は、デビュー作『天使のナイフ』から著者が一貫して挑み続けているテーマだ。


→続きはIN★POCKET5月号をご覧ください

もうひとつのあとがき
作品を書きあげるまでの経緯、エピソードなど、普段は目にすることのない裏側を垣間見ることのできるエッセイです。お楽しみください。
辻原登 「小説の現場から」
辻村深月 「藍色を照らす光」
●中島かずき 「14年間練り直し続けた物語」
●野崎 歓 「赤ん坊大全!?」
●白石 朗 「ジョン・コーリーvs.野生の熊!?」
●犬丸 治 「戸板康二と向き合って」


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