桜井淳所長が"高層ビル耐震設計法"について実施した鹿島建設本社執行役員への聞き取り調査の内容
テーマ:ブログ以下の内容は"水戸"からの情報です。桜井淳所長は、6月4日16:00-17:30、鹿島建設本社別館会議室で、"高層ビル耐震設計法"について、執行役員への聞き取り調査を実施しました。以下、主要な内容です。
Q1原子力発電所の耐震設計のように国の基準はあるか。
A1ない。事業者の判断で行っている。
Q2関東大震災の地震加速度の約2倍(約1000ガル)と認識しているが。
A2一般的には、震度6強の約500ガルで、場合によって、600ガルもあれば700ガルもある。
Q3活断層から地震加速度を評価しているのか。
A3明らかに活断層がある場合には、評価しているが、そうでない場合には、評価していない。考慮しているのは直下型地震とプレート海洋型地震である。
Q4地震によって骨組み構造材が損傷することは考慮しているか。
A4考慮しているが、それ以上は、考慮していない。
Q5原子力発電所では、原則として(S2を超える場合には塑性変形領域)、塑性変形を認めていないが。
A5降伏応力の4倍以下ならそのまま使い続けている。
Q6降伏応力を超えれば、弾性変形領域から塑性変形領域になり、降伏応力の4倍というのは、非常に大きく、原子力発電所では考えられない。
A6そうですか。
Q7海外に比べ、日本の耐震設計は、厳しいか。
A7地震国のため、特に、厳しい。
Q8建設地の地質の条件は何か。
A8N値50以上の東京礫層に建てている。そうでない軟弱な場合、杭を打ち込み(直径約2メートルのコンクリート柱か直径約1メートルの鋼管)、N値50以上の地層に届くようにしている。西新宿の高層ビルは、たとえば、55階の三井ビルでも、杭は使われていない。東京駅周辺や新橋駅周辺も杭は使われていない。東京の地質は高層ビルの建設に都合が良い。
Q9骨組み構造材は、ボルト締めか、溶接か。
A9効率的で、振動減衰特性が良いため、溶接にしている。ボルトにすると長いものが多くなり過ぎる。
Q10耐震設計は、コンピュータシミュレーションによるが、風圧(台風・強風・突風)のコンピュータシミュレーションもしているか。
A10している。他の高層ビルによる風の流れの影響も考慮している。特に、幅の狭い高層ビルの設計の場合には、実験とコンピュータシミュレーションを行っている。
Q11四国大橋の設計では最大風速(秒速)80メートルを想定しているが、高層ビルの設計ではどうか。
A11500年に1回の頻度で発生する平均風速45メートル(高さ10メートル位置)、瞬間風速70メートル(平均風速の1.5倍)まで考慮している。ビル内にいると揺れが分かる。強い季節風でも揺れる。
Q12建設費は。
A12約100万円/坪(すべての階の坪数を考える)。
Q13建築用鋼材は普通鋼材か。
A13建築専用鋼材で、溶接性が良く、降伏比(降伏後も強く、粘り強い)の良い物である。
Q14受注は競争入札か特名か。
A14実際には両方ある。
Q15技術的に何階まで建設可能か。
A15技術で制限されるのでなく、法的制限(羽田空港との関係での高さ制限)・経済性・風圧で決まる。
Q16今、都内で、多くの高層ビルが建設中だが、好景気か。
A16今は厳しい受注期にある。仕事は、多くあるが、利益が出ない、資材が高い、競争が厳しい。
Q17大手五社の技術力は。
A17同レベルと認識している。ただ、制振技術(ダンパー等による振動減衰)は、鹿島が高い。
Q18高層ビル解体で出る鋼材の再利用はするのか。
A18溶解して、規格に合うように、成分調整して、再利用する。
以上が機密事項を除外した主要な聞き取り調査の内容です。桜井所長は、原子力発電所と高層ビルの耐震設計の考え方の相違に着目し、技術評価の論文をまとめる予定です。聞き取り調査は、聞き取り内容の解釈・考察が重要になります。桜井所長は、高層ビルでは、地震による影響により、降伏応力の4倍以内の塑性変形での継続使用が許容されるというのは、意外な真実だと言っていました。