EM菌という微生物群の力を借りてプールそうじをする学校が各地に出てきています。化学薬品を使わなくても、ブラシなどでこするだけで、壁や底にこびりついたヘドロやアオコが取れて、作業が楽になっているそうです。
埼玉県北本市石戸小「すべらないね」
汚れが簡単に落ちる
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プールをそうじする石戸小の5年生。底がさらさらとして、デッキブラシなどでこするだけで、よごれが排水口に流れていきました(石戸小提供) |
埼玉県北本市の石戸小では4日、5年生74人が2時間くらいでプールそうじをすませました。プールの広さは、小学校では平均的な15メートル×25メートル。使った道具はデッキブラシ、水切り、たわし、スポンジとぞうきん。みがき粉や薬品は使いませんでした。
EM菌の培養液は、2月と5月、2回に分けて50リットルずつ入れました。そうじの前の日に水をほとんどぬき、当日はホースでプール全体をぬらすように水をかけた後、床や壁をみがきました。壁についているはずのヘドロやアオコがあまりなく、子どもたちがバケツに水をくみ、スポンジやたわしでこすります。「スポンジでごしごしこすったら、よごれが落ちた」と男の子の一人。
指導した5年の担任の先生は、EM菌を使わなかった以前のプールそうじはくさくて鼻がつーんとしたのに、今回は「くさいかなー」と感じる程度だったといいます。「水がどろどろしていないので子どもたちはすべりません」
北本市は1993年ごろから、生ごみの減量対策にEM菌の調査・研究をしてきました。市内の小、中学校計12校のプールそうじを少しでも楽にできるようにと、一部の小学校で効果を試したうえで、2004年から全小中学校でEM菌の培養液を使い始めました。
06年度まで別の市の小学校にいたという石戸小教頭の渡辺浩行先生は、壁のしみのようなよごれは子どもたちがこすっただけでは落ちないことが多く、先生たちがもう1度、クレンザーや塩素剤を使って漂白していたといいます。「この学校に来たばかりの去年は、本当によごれが落ちるのかなと思いましたが、落ちておどろきました」
香川県丸亀市城西小「環境にもやさしい」
事前に液を入れてヘドロ退治
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デッキブラシでプールの底をこする城西小の子どもたち。EM菌を入れたプールの壁は、そうじをする前からよごれがほとんど目立ちません=香川県丸亀市の同小で |
香川県丸亀市の城西小は6日、5、6年生167人でプールをそうじ。水をぬいたプールは、底にヘドロが固まっている部分もありますが、壁はそうじをする前から、よごれが目立ちません。黒ずんだところをブラシでみがきますが、それほど強くこすらなくても、よごれが落ちていきます。
地元の社会奉仕の団体、丸亀ロータリークラブから提供されたEM菌を、去年初めてプールそうじに活用。みがき粉を使う必要がないことや、そうじの時間が短くなったことなどから、今年もEM菌の力を借りることにしました。
家から集めた米のとぎ汁にEM菌と糖蜜を入れ、1週間ほどかけて菌を増やします。去年の秋と、今年4月の2度にわたって、2リットルのペットボトル約100本分の培養液をプールに入れました。「最初はEM菌って薬かと思ったけど、プールに残った水にアメンボがいて、環境にもやさしそうなので安心した」と子どもたち。
岐阜市の芥見東小も06年から、すぐそばを流れる清流の山田川にすむホタルを守ろうと、プールそうじにEM菌を使っています。
【EM菌】
生ごみをたい肥にするのに作られる
EMとは「Effective Microorganisms(エフェクティブ・マイクロオーガニズムス)」の頭文字をとったもので、日本語で「有用微生物群」といいます。EM菌の普及をすすめるEM研究機構(沖縄県うるま市)によると、乳酸菌や酵母菌などを組み合わせて増やしたものです。1982年に沖縄・琉球大学の比嘉照夫名誉教授が開発しました。主に生ごみなどをたい肥にするために作られましたが、プールのそうじにも使えないかと各地で試みられ、同研究機構が2006年度に調べたところ、全国874の小中学校で使われていました。 |
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