日本の地名が中国で農産物や工業製品などの商標に使用されるケースが相次いでいる問題で、「福井」の名称が中国の企業よって商標登録され、「福井・FJ」「福井・FUKUI」も出願申請中であることが10日までに、ジェトロや県国際・マーケット戦略課の調査で分かった。
登録の目的は不明。日本の地名を商品につけることで高く販売する狙いがあるとみられる。県内から農産物などを輸出する際、中国本土で「福井」と表示した商品を販売することができない恐れもあると、ジェトロや福井県は警戒している。
中国で県産品販路拡大を進める県が、中国商標局のホームページのデータベースを検索したところ、「福井」は、中国の事業者が酒の分類で2001年7月13日に出願、02年6月14日に登録されていた。このほか、中国の事業者や個人によって、衣料や果実など分類で13件の申請が行われている。「福井・FJ」(FJは福井の中国語読みの頭文字)、「福井・FUKUI」はともに中国の事業者が申請人となっている。
ジェトロ北京センター、ジェトロ福井によると昨年末段階で、47都道府県のうち27の名称と、3つの政令指定都市名が出願申請されている。このうち福井や秋田、京都、石川、富山など19府県と川崎市の地名が登録済み。地名とロゴマークがセットになって、同じ地名が複数登録されているケースもある。
中国商標法では、公衆によく知られた外国地名は商標とすることができないが、特許庁総務部国際課によると審査官の認知度にも左右されるという。「東京」「横浜」は登録が認められていない。
今春までジェトロ上海センター所長を務めていた薮内正樹・海外調査部長は「『福』にはめでたい意味があるほか、日本産には安心、安全、高性能というイメージがあり、福井で作られたものということは価値があるということ」と指摘。ネーミングで価値を高めることに加え、日系企業への商標権の転売目的もあるとみられる。
中国の状況について不明な点も多く、県では福井のひらがなやカタカナ表記などについてもさらに情報を収集し、福井ブランドを守るための対策を検討していく考え。
また、中国で事業展開する県内企業にとって商標権問題が「海外展開の足かせになる恐れもある」として、県内企業に上海、香港事務所への相談、速やかな商標登録を呼び掛けている。
薮内部長は「中国の見本市に出展する場合には、商標登録申請が終わっていないとだめ。中国市場には直接かかわらないと思っていても、グローバル化が進む中では必要な登録をしておくことが大切」と話している。
地名が商標に使われた問題では、中国産りんごが青森産りんごとして販売され、青森県は果実のほか乳製品やお茶などでも申請された「青森」商標について03年7月に異議申し立てを行い、昨年12月に異議が認められた。また鹿児島でも異議申し立ての手続きが進められている。地名以外でも「九谷焼」「美濃焼」が中国の事業者によって登録されている。
特許庁によると、中国の商標登録手続きは、申請から約2年の審査をへて、公告・パブリックコメント(意見募集)の後に登録となる。異議申し立ては公告から3カ月以内であれば可能で、同庁では絶えずホームページで申請状況をチェックする必要があるとしている。