もうまもなく、民主、社民両党などが提出する福田首相に対する問責決議案が参院本会議で可決されますね。首相に対する問責決議が可決されるのは憲政史上初めてのことです。まあ、もともとそうだったと言えますが、参院で正式に「ノー」という意思が示されることで、福田氏はいよいよ名実ともに参院に足場を持たない「衆院首相」となります。国会は小幅延長したものの21日に終わりますから、それで目に見える影響はしばらくは出ないかもしれませんが、ねじれ国会も来るところまで来た感じです。
さて、その福田氏への問責決議提出について、10日の読売朝刊に興味深い記事が出ていました。「首相問責あす提出へ」という、それ自体は当たり前の記事なのですが、民主党の輿石東参院議員会長が主語となっており、「都内で開かれた日本教職員組合の会合で、福田首相に対する問責決議案を11日に参院に提出することを明言した」とあります。みなさん、何か引っかかりませんか。
もちろん、輿石氏が山梨県教職員組合委員長出身で、日教組の政治団体、日本民主教育政治連盟の会長であることはこれまで何度も書いてきました。ですから、輿石氏が日教組の会合に出ることはごく自然なのですが、どうして学校の先生方の集まりで首相問責のタイミングについて初めて明らかにしなければならないのでしょうか。日教組がそういう団体であることは百も承知ですし、私もいろいろ指摘してきましたが、やはり違和感を覚えます。教育が、こんなに政治まみれであっていいのかと。子供たちの今と将来を思うとき、天を仰ぎたい気持ちになるのです。
で、今朝の産経の教育面に、北海道紋別市の中学校教頭、長野藤夫氏の「学校から労組排除を」というコラムが載っていました。教育現場の危機的な現状を分かりやすく示しているうえ、かなりはっきりと述べてあり、感心しました。ですので少し、引用します。
《国旗・国歌の指導▽学校職員評価制度▽心の教育▽指導主事による学校教育指導▽主任制▽全国学力・学習状況調査▽全国体力・運動能力、運動習慣等調査▽初任者研修▽10年経験者研修--。
これらにことごとく反対し、妨害や骨抜きを図り、学校教育の正常化を妨げる反社会的勢力がいる。
彼らは、授業時間や時数を意図的に削る怠業はもとより、勤務中の組合活動やストライキ、選挙運動などの違法行為でさえも平気ではたらく。もはや教師の仮面をかぶっているだけと言っても過言ではない。
はたして、何が彼らをそうさせているのかである。
それは、次の言葉に言い尽くされている。
「自分はこの学校の職員である前に、組合員です」》
北海道と言えば、道教組が猖獗を極めている地域ですね。安倍内閣によって改正された教育基本法は9条に「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し」と、改正前はなかった「崇高な」という言葉が加えられていますから、教員は単なる教育労働者ではなくなったはずです。でも、都合の悪い法律も道徳も無視し、否定するのが日教組の常套手段ですから、気にはならないのでしょうね。
ここで話は5日前にさかのぼりますが、輿石氏は6日、行方に立ちはだかるライバルもいないまま民主党の参院議員会長に無投票で3選を決めました。まさに無人の野を行く如しです。輿石氏はそれを受けた記者会見で「小沢一郎代表を先頭に政権を取りに行く。その一点に集中してがんばりたい」と述べています。これは、次期衆院選に向けて全力を投入するという意味でしょうが、私は輿石氏はまた、自身のメンツにかけて配下の教員たちを選挙運動にかり出すのだろうなと感じました。特にお膝元の山梨県の先生たちは、再びさまざまな政治活動を強いられそうです。
そこで今回は、平成17年12月27日付で、文部科学省の銭谷真美・初等中等教育局長名で山梨県教育委員会あてに出された通知「教育公務員による政治的行為に係る対応等について」を紹介したいと思います。輿石氏に、こういうこともあったねとせめて覚えていてほしいので。もちろん、輿石氏にしてみれば、文科省などもはや自分の影響下だと思っているのでしょうが…。
《山梨県における教育公務員による政治的行為等については、かねてより貴教育委員会に対し報告を求め、必要な指導を行ってきたところですが、文部科学省において山梨県内の関係機関に対し実施した調査を踏まえ、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第48条第1項の規定に基づき、下記のとおり適正な処理を図るよう改めて指導します。このことを踏まえ、速やかに取り組み願います。
1.教育公務員による政治的行為に係り山梨県教職員組合が平成16年12月27日に行った文書訓告等について
(1)教育公務員が、政治的団体から資金カンパの要請を受けて、その要請を第三者に伝達し、若しくは資金を託され政治的団体に届ける行為、又は政治的団体の入会カードを組織的に第三者に配布する行為は、教育公務員特例法第18条第1項の規定により(中略)政治的行為であり、違法であること。
(2)上記(1)を踏まえて、山梨県民主教育政治連盟(以下、「県政連」という。)からの資金カンパの要請等への各校長等の関与について、県費負担教職員の服務を監督する市町村教育委員会と十分に連携しながら、県教委は事実関係を確認し、法令の規定に照らしその違法性の有無について適切に判断を行った上で、平成16年12月27日に行った処分について見直しを行い、適切な処分を行う必要があること。
2.山梨県教育研究所への教職員の長期研修派遣について
長期研修として派遣されている教職員については、「事務局長」の肩書きを用いて実質的に当該研究所の運営を担っているものであり、研修としてふさわしくないと考えられることから、速やかに派遣を取りやめる必要があること。
3.県政連への教職員の関与について
山梨県教職員組合の役員としてもっぱら従事するため在籍専従の許可を受けている教職員が、県政連の資金管理に関係して、政治資金収支法違反の容疑で書類送検されたことから、当該教職員を含むすべての在籍専従の許可を受けている教職員について、県政連への関与などその従事している業務の実態について速やかに事実関係を調査し、地方公務員員法第55条の2第1項ただし書き、教育公務員特例法第18条第1項その他の法令に違反する実態の有無について厳正に確認するとともに、在籍専従の許可の取り消しも含めた適切な措置を行う必要があること。(以下略)》
…少し補足すると、通知に出てくる山梨県教育研究所とは、山梨県教職員組合が中心となって開設した教育シンクタンクのことで、小学校教諭が2年間も赴任先の小学校に出勤しないまま、研修扱いで給与を受け取る「ヤミ専従」の舞台となっていました。しかもそれに県教委が一枚かんでいたのです(山梨では、県教委も組合の支配下です)。また、書類送検された教職員が問われた罪とは、輿石氏を支援するために教員からカンパを募り集めた寄付金を政治資金収支報告書に記載しなかった問題です。
この件では、当時の県政連の会長と山梨県教職員組合の財政部長が書類送検(後に略式起訴、罰金刑)されたわけですが、輿石氏自身は「私は関与していない」「私ども間違っていない」「私のために一生懸命やってくれたことは分かるが、私がどうこう言う立場ではない」で済ませ、その後も民主党で順調に力を蓄えていったというわけです。とても理不尽にも、悲しくも思えます。
文科省が通知を送ったのは、県教委が前年に行った処分は甘すぎるとし、処分のやり直しを求めたものでした。これに対し、県教委はいったんは拒否するものの、18年3月になってようやく処分のやり直しをし、山梨県教職員組合幹部や校長ら計24人が懲戒処分や文書訓告などを受けました。きょう、長々と過去のことを振り返ったのは、輿石氏が、またこうしたことを繰り返させようとするのではないかと恐れたからです。そして、できたらもっと多くの人に、教職員組合に関心を持ってほしいと考えているからでもあります。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/trackback/605735
2008/06/11 16:02
阿比留様、こんにちは。
日教組の集まりで、報告をした輿石氏も問題ですが、そもそも教師が政治活動を、してはいけないと言う事を、一般の政治に無関心な人々は知らないのでは、ないかと思いました。
読売新聞と言えば、一般紙ですし、その朝刊に記事が載ったのに、誰も騒いでいない。
その事の方が、薄ら寒いのですが。私だけでしょうか?
2008/06/11 16:18
こんにちは。
阿比留様
日本全国の教育者の中に非常識な発言を繰り返す大学教授、曲がった政治にに血眼になる日教組関係者。これらの教育を受けてまともな子供に育つはずはなく社会に出ても日本人の常識を持つ大人になれません。最近の凄惨、残忍な若者の犯罪にも影響は大きいと思いますよ。
2008/06/11 16:47
夏空様
こんにちは。>そもそも教師が政治活動を、してはいけないと言う事を、一般の政治に無関心な人々は知らないのでは、ないかと思いました。…これはもしかしたらそうなのかもしれません。ただ、何の問題に関してもですが、国民が自ら知りたいと思い、知ろうとしないことは、われわれがいくら書いても伝わるものではないので…。
2008/06/11 16:49
くぼた様
こんにちは。そうですね。道徳や規範、勤勉さを否定し、日本と日本人は歴史的に恥ずかしい存在であると教える一方、何を言ってもやっても自由だと放任してきたのが日教組教育ですからね。
2008/06/11 16:57
阿比留さん
確か、中川昭一氏が政調会長だったとき、「日教組はけしからん、免許剥奪だ!」というような発言をしたことがあったように思います。
日本人の税金から給料を貰っていながら、生徒にはひたすら反日教育するなど、本来なら言語道断です。
何とかこの組織を解体しなければ日本は良くなりません。
「日教組は何をしてきたのか?」というようなドキュメンタリーがテレビで頻繁に流され、多くの国民が日教組の実態に気がついてくれると良いのですが…。
2008/06/11 17:26
輿石なんとかは組合的発想しかできないので何を言い聞かせても無理だが、問題は鳩山幹事長です。
今日の産経夕刊を見ると、彼は記者団に「国民が福田政権に失望している。新しい政権にしてほしいという声に応えるべき。問責は不信任が衆院で可決したのをと同等の価値を持つ。深刻に受け止めるべきだ」と強調したそうです。
憲法第69条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」と定めています。参議院での問責が衆議院の不信任と同等の価値を持つとはどこからでてくるのか、いやしくも野党第1党の幹事長なら憲法上の理論付けをしてから発言せよといいたい。テレビのコメンテーターの無責任発言と同じレベルの発言です。
2008/06/11 17:29
hanausagi様
これはstaro様ご批判の森元首相も一昨年10月の産経インタビューで面白いことを述べています。《一番の問題は知事だと思うね。知事は必ず自治労と日教組と妥協するんです。それで次の選挙で応援させる。そうすればよほど失政がない限り、2期、3期はやれる。さらに4期、5期…。地方議会も知事の子分に成り下がっている。だから日教組、自治労を壊滅できるかどうかということが次の参院選の争点だろうね。》本当に、こういう争点に持ち込んでほしかったと心から思います。>ドキュメンタリーがテレビで頻繁に流され…。やっぱりテレビですか…。
2008/06/11 17:31
weirdo31様
鳩山氏の発言が限りなく「軽い」のは今に始まったことではないので…。記者の間では、鳩山氏が何を言っても「まあ、鳩山さんだから…」と割り引くというか、あまり相手にしない傾向があります。しかも、政局狙いの発言だから何でもありですし。
2008/06/11 17:54
こんばんは
問責決議案が参院で可決されました。
明日は衆議院で信任決議案が提出されます。
テレビメディアはガソリン引き上げの時に問責決議案を
提出すべきだったといっているテレビ局もありますが、
国会の空転は誰も望まないはずです。
野党の審議拒否戦略は解散・総選挙の見通しがない以上
逆効果だと思うんですが…
2008/06/11 18:13
森 浩(奈良)様
こんばんは。民主党も退路を断つポーズをとって見せたというところかもしれません。いずれにしろ、国会はもうすぐ閉会するし、その前に両党が合意した法案はどんどん駆け込みで通したので、与野党ともにすぐにはあまり影響はないと思います。ただ、問責の結果が支持率などに表れたり、スキャンダルが出たりすると、先のことは分からなくなりますね。
2008/06/11 18:34
阿比留様
こんばんは。山梨県では県教委も組合の支配下にあるという記述を目にして、こないだ貴紙に掲載されたこの記事を思い出しました。
「山梨県教委が所得税8350万円未納付 甲府税務署、750万円追徴」
(2008.5.30 12:49)
未納の原因は単純ミスとのことですか、果たして本当にそうなのかと勘ぐりたくなります。わざと未納付にして、浮いた分のお金をどこぞに流したのではないかと…。
2008/06/11 18:38
2008/06/11 18:58
阿比留さんごぶさたしています。
この春から息子は小学生になりました。楽しそうに通っています。
がしかし、ここ何年かの、この国の未成年犯罪や学校でのいじめ、
そして在日外国人による未解決事件等を考えると、
様々な不安が常に私たち親を悩ませ続けます。
すべての基本は子供の頃からのしっかりした教育だと心から思います。
そして日本の政治家ならば、まず何よりも日本国民の安全を最優先に考えるべきでしょう。
特定民族外国人を優遇しすぎ、自国民をどんどん不安で悲惨な方向へと持って行く売国議員たち、日教組も含め、今、日本に巣食うすべての老害は早く消え失せ、
日本国民のための日本を作ろうとした安倍総理再登板を望みます。
2008/06/11 19:21
yxevan様
おひさしぶりです。私の子供も来年小学校に上がります。不安を共有します。われわれがこういう大きな不安を抱え、危機感と焦燥感を覚えていることを理解できない政治家が多いのは確かだし、その状況をなんとかしたいと強くねがうものですが、その政治家たちを当選させてきたのもまた国民だと思うと、思考が堂々巡りをするような気分です。
by 阿比留瑠比
図に乗っている輿石氏に覚えて…