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【岐阜】

「ナイフが元凶は心外」 秋葉原殺傷で関の刃物業界が困惑

2008年6月11日

ずらりと並んだ関のナイフ。全国的に人気が高い=関市平和通の県刃物会館で

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 7人が殺害された東京・秋葉原の無差別殺傷事件が、刃物産地の関市で大きな波紋を広げている。ナイフが凶器となったことが連日報道される中、刃物のイメージダウンは避けられない。銃刀法の規制強化もとりざたされており、刃物業者らは「事件の背景を解明することが一番大切。ナイフが凶行を招いたような印象をもたれるのは心外だ」と、気をもんでいる。

 事件では、犯人の男(25)がナイフ5本を持参。両刃で貫通力の強いダガーナイフを使い、次々に通行人を殺傷した。町村信孝官房長官は事件を受け、銃刀法の規制強化の検討に言及している。

 関市のナイフ類の出荷額は、2005年で26億1400万円に達し、全国シェア55・4%。刃物類の中でも、関のナイフの知名度は高い。

 県関刃物産業連合会の北村正敏会長は「ナイフはすべて悪いものというイメージをもたれかねない」と、懸念。凶器のダガーナイフが軍用、自衛用の武器であることを指摘した上で「この種の特殊なナイフの規制は仕方ないとしても、刃物全体を危険視して規制しようとするのは問題」と語る。

 刃物を使った事件が起きる度、業界は少なからぬ影響を受けてきた。刃物売り場は全国的に縮小傾向にあり、販路拡大の壁にもなっている。

 同連合会はこれまで、子どもたちに刃物の正しい扱い方を教える啓蒙(けいもう)活動に力を入れてきた。ある業者は「刃物は、なくてはならない大切な道具。事件に使われると、いつも心が痛む」と表情を曇らせた。

 日本輸出刃物工業組合の坂井勇平理事長(ガーバーサカイ社長)は「ナイフは釣りやキャンプ、狩猟など、さまざまな用途、種類があるが、サバイバルナイフという名でひとくくりにされることがある。マスコミでも、ナイフがきちんと理解されておらず、一般の人に誤解を与えかねない」と批判。ナイフ以外にも、包丁などの刃物が身近にあることに触れ「ナイフがあったから、事件が起きたのではない。事件を招いた背景について、冷静に考えることが大切」と訴えている。

 これに対し、ある警察関係者は、犯人がわざわざ福井市まで行ってナイフを入手した点に注目。「趣味性が強く、用途が限られるナイフについては、犯罪抑止のため、販売時に身分確認や住所、氏名の記録をすることを検討すべきではないか」と、話している。

 (中山道雄)

 

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