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【主張】スピード水着容認 世界と戦う条件が整った
競泳の日本代表が8月の北京五輪で、世界新記録を連発している英国スピード社の水着「レーザー・レーサー」(LR)を着用できるようになった。選手、コーチに水着の選択権を委ねるのは当然であり、これで世界と戦う条件が整った。
日本水泳連盟はミズノ、デサント、アシックスの国内3社と、2004年のアテネ五輪後から2017年3月までの長期契約を結んだ。水着の提供を受けるかわりに、代表選手に契約社の水着を着用することを義務付けていた。
今年2月に発表されたLRは、スピード社が米航空宇宙局(NASA)などとともに開発した水着である。
水をはじく軽くて極薄の生地を使い、体を強く締め付けることで水中での抵抗を極力抑える効果があるといわれる。実際に着た選手が欧州、豪州選手権で世界新記録を次々と樹立し、一躍脚光を浴びるようになった。
日本水連は3社との契約があるため門戸開放に二の足を踏んでいた。しかし、先ほど行われたジャパンオープンでは、男子二百メートル平泳ぎで北島康介選手が世界新をマークしたのをはじめ、LR着用による日本新記録が16個も誕生した。“驚異の水着”を目の当たりにして、解禁に踏み切らざるを得なくなった。
オリンピックは技術革新の実験場でもある。選手が自らの限界に挑戦するように、スポーツ用品メーカーも4年に1度の世界的なイベントに合わせ、新製品を開発して技を競う“もう一つの戦い”が繰り広げられる。
日本のメーカーは陸上競技の靴やテニス、バドミントンのラケットなどで定評があり、有力外国人選手がこぞって使用するものもある。4年後のロンドン五輪では国内3社が誇る開発、技術力で水着に再チャレンジしてほしい。
また、北島選手はミズノ社とアドバイザリー契約を交わし、他にも社員選手がいる。企業として自社製品の着用を望むのは当然だが、LR解禁を了解した以上、国内3社は現場サイドの意向を尊重して、これまでと同じような支援を行うことを期待したい。
水着によって記録が短縮され、勝負が決まるのはスポーツの基本から外れるとの見方がある。
主役はあくまでも選手だ。メダル獲得には日ごろの鍛錬の成果が試される。一層の奮闘を望む。