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社説2 夏時間制は北海道に注目だ(6/11)

 春から秋にかけて時計の針を1時間進めるサマータイム(夏時間)を導入すべきだという論議が出てきている。メリット、デメリットを見据え実現の可能性を探るうえで、北海道での試行にも注目したい。

 「時計を進める」とは、生活が繰り上がるという意味だ。いま午前7時に起き、9時から午後5時まで働き、11時に寝る生活を送っているならば、6時起床、8時―4時勤務、10時就寝という勘定になる。もちろん時刻自体は今と変わらない。

 夏は日が長いし、暑い。早く起きれば涼しいうちに活動を始められる。仕事が早く終わればオフィスの冷房、照明を節約できるし、日の高いうちに自由な時間が始まる。

 つまり、省エネルギーや余暇の充実、その経済効果が期待できる。超党派の国会議員連盟は2010年度導入に向けて法案を準備し、福田康夫首相は9日の記者会見で与党の早期の結論を期待すると述べた。

 過去に何度も取りざたされたサマータイム導入が現実味を帯びている背景には、環境問題への意識の高まりや、環境を主要テーマに洞爺湖サミットが開かれることがある。

 ただ、省エネ、経済効果の数字の多くはあくまで試算にすぎない。睡眠不足など体への悪影響、コンピューターシステムや時計、電気製品などの調整の手間を問題にする声もある。結局暗くなるまで働き残業が増えるとか、早く帰宅すれば家庭の光熱費がかさむとも指摘される。

 賛否どちらの言い分に、より理があるのか。それを計るため、札幌商工会議所の呼びかけで北海道の企業・団体が出退社時間を1時間早める試行を続けている。今のところ、時計は進めず学校や交通機関は不参加だが、参加した経営者の51%、従業員の37%は北海道が独自に時計を進めることに賛成している。「全国一律なら」を合わせると、賛成はそれぞれ88%、71%に上る。

 緯度が高い北海道は季節による昼の時間の差が大きく、欧州と同じようにサマータイムには好条件だ。道民の合意があれば、時計を進める本格的なサマータイムを北海道がまず導入するという発想があっていい。その結果を、全国実施の判断材料にすることもできる。

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