「【教育】学校と塾、どこで線引き？　拡大夜スペ　教員の役割、改めて問われる」の記事詳細：イザ！

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　東京都杉並区立和田中学校で１月から始まった、塾講師による有料授業「夜スペシャル」（夜スペ）。代田昭久校長に代わり、５月末から希望者全員が受講できるようになった。塾が学校へ入り、中下位者まで対象が拡大されたことで、学校・教員の役割は何かを問うことになった。夜スペについて改めて考えた。（村上智博、吉原知也、慶田久幸）
　夜スペは平日は週３回、４５分授業を数学が２コマ、国語を１コマ、土曜日は英語を３コマ行う。
　現在は、１月からの受講者と５月からの新受講者を分けて授業を行っている。
　新しいクラスの国語の授業を取材した。講師の冗談に大きな笑い声が出るリラックスした雰囲気。黙々と勉強をする生徒とおしゃべりをして楽しそうな生徒は半々程度。既存クラスは数学の因数分解をこなした。
　代田校長によると「夜スペ」の効果について、既存メンバーと保護者が「学習意欲が高まった」「宿題をやるようになった」と評価しているという。３年生の保護者会でも話題となり、新たな希望者がいたため、再募集したところ、２４人（うち１人は後に辞退）が応募した。
　藤原和博前校長の方針を変更した理由については「意欲のある生徒に多様な学びの機会を提供したいという私の考え」と説明。目的も、高校受験だけではなく、学習意欲の向上や論理的思考が身に付くことなどに拡大したという。
　教員は基礎学習指導や生徒指導、部活動に力を入れてほしいとしている。
　塾を導入した理由については、経済格差や家庭環境など子供の教育背景が困難な状況となっているのに、教員数や授業時間は不足しており、学習指導に民間の力を借りたと説明した。
　新たに夜スペに参加した男子は「受験も近いし、塾に行けとの両親の勧めもあり応募した。塾の授業は初めてだが、学校と違い生徒に答えをたずねることが多い」と満足そう。別の男子は「最初の募集では試験があり、落ちるのがいやだから受けなかった。今回は、次の募集はないといわれて受けた。学校の授業は基本、夜スペは応用なので比較は難しい」という。中には「中学の授業はレベルが低かったが、夜スペに通うようになってから、それまでほとんどやらなかった家庭での勉強も行うようになった」という男子も。
　最初から通っている女子は「夜スペを受けてから、別の塾での国数英テストの点数が上がった」という。ただ、夜スペで教えない理科、社会は別の塾に通って勉強しているそうだ。別の女子は、夜スペ開始とともに塾を辞め、それ以来、理社を塾で習っていないのが心配だという。
　藤原前校長は８日、全国学習塾協会のセミナーで、夜スペを導入した理由の一つは、子供が算数・数学ができない理由は２５種類くらいあるとして、「教員がすべての問題に対応できるわけではないから、地域の学生や塾の力をすぐに借りようということだ」と述べた。　
　◆識者の意見◆
　≪賛成≫
　■子供のためにいいこと　梶田叡一・兵庫教育大学長
　勉強したい子供のことを考えれば良いことだ。費用の高い塾に通わせられる親ばかりではない。安全も確保されており、夜、塾の往復の心配もない。
　時間は待ってくれない。どうやって子供に勉強のチャンスを作ってあげるのか。飲み込みの早い子供もいれば遅い子供もいる。それを教えてあげることの何がいけないことなのか。やるなら全員を対象にすべきだと思っていたので、希望者すべてを教えることになってよかった。
　教員は忙しい上、定数が不足しており、精神論で対応しろと言っても無理なことだ。
　形式論で考えてはいけない。子供のために何がいいのかを考えるべきだ。
　ただ、夜スペは緊急避難的なものと考える。しかし、どれだけ教員を増やせば十分か分からないし、国や自治体の財政事情が許さないだろう。その意味で民間の力を借りるのは現実的な対応だ。（談）
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　≪反対≫
　■公立中学がゆがむ心配　藤田英典・国際基督教大教授
　最大の問題は学校と塾の境界を限りなくあいまいにしたことだ。学校教育の目的を高校受験に傾斜、先鋭化している。かつて日比谷高校を頂点に東大合格者数でランク付けされ高校教育がゆがんでいったように、公立中学がゆがむ心配がある。
　もう一つは学力が受験学力・受験技術に矮小（わいしょう）化されていくことだ。藤原前校長は、同校のホームページで、夜スペの目的をトップ校への合格とうたっている。文部科学省が「生きる力」「自ら学ぶ力」と言っても結局、受験が唯一の物差しになっている。
　夜スペは保護者や生徒の要望で始めたとしているが、ニーズを掘り起こしていく企業のやり方だ。
　夜スペで多くの保護者は浮足だっている。塾の売り込みも激しくなっている。
　学校の役割とは、すべての子供に基本的なことを教えることだ。受験テクニックを教えることではない。（談）

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