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2008年6月11日

◎金沢競馬の黒字 我慢を続けたかいはあった

 金沢競馬の〇七年度収支が黒字化したのは、「公営ギャンブル」へのいわれなき偏見を 乗り越え、関係者が一丸となって経費削減に努め、同時に競馬の魅力を伝えるイベントや宣伝活動、ネット販売の充実などにまじめに取り組んだ成果である。乾いたタオルを絞るような努力の一方で、「縮小均衡」一辺倒に陥ることなく、顧客サービスには思い切って投資をしてきた決断は正しかった。多くの地方競馬が赤字を理由に廃止に踏み切るなか、我慢に我慢を重ねたかいがあったといえるだろう。

 むろん、県営開催分の黒字額はわずか千百万円余に過ぎず、全体の収支から見れば「誤 差」の範囲に過ぎない。景気回復という追い風にうまく乗れた幸運も見逃せない。まだまだ手放しでは喜べないが、猛威を振るった馬インフルエンザの損失を最小限に食い止め、三カ年の経営改善計画の初年度に黒字化を達成した「経営力」は評価されてよい。

 私たちはこれまで、金沢競馬の売り上げが伸び悩んでいる原因の一つに、行政がギャン ブル行為を勧めることへのためらいがあると、指摘してきた。公営競馬は競馬法に基づいて運営されており、収支は県や市の財政に直結している。多くの地元雇用を生み出し、地域経済への貢献度も高い。ギャンブルを悪と決めつけるような意見を気にせず、胸を張って増収に励み、黒字幅の拡大に努めてほしい。

 石川県は、金沢競馬の存廃問題について、外部識者らで構成する検討委員会を設置し、 検討を重ねてきた。同委員会は一昨年末、三年間で黒字化できなければ廃止もやむを得ないとする最終報告をまとめた。その初年度から黒字を達成できたのは、経費削減のたゆまぬ努力と、競馬ファンに向けた広報宣伝が徐々に浸透してきたことが挙げられる。

 客席フロアを明るくして、女性や若者層にアピールし、シーズンを通して多彩な催しを 企画し、メディアへの露出を高めてきた。当たり前のようでも、そうした小さな工夫の積み重ねこそが、金沢競馬の将来にひと筋の光をもたらした要因なのだろう。

◎李政権の危機 日韓関係への影響が心配

 韓国の李明博政権が米国産牛肉輸入制限解除問題で危機を招いた。牛海綿状脳症(BS E)を恐れる国民が、制限解除に反発し、今年二月末の発足時に70%を超えていた政権支持率が20%前後にまで急落した。

 牛肉問題への反発が、原油高騰による物価高などと重なり、李政権の政策全般へと広が り始めたようだ。

 底流には与党ハンナラ党の内紛、「理念なき実用路線」と批判される李大統領に対する 保守派の不信感、左翼的メディアを含む親北勢力の巻き返しがあるといわれる。未来志向やシャトル外交を約束した日韓関係への悪影響が心配になってきた。

 韓国憲法には大統領辞任の手続きが定められておらず、このため任期を満了するか、国 会の弾劾で罷免されるしかないとされており、民主主義が根付いていなかったころにはクーデターで政権が交代した。事態を重くみた韓昇洙首相は大統領へ責任が及ぶのを避けるため、全閣僚の辞表取りまとめに動き、一両日中にも大幅な内閣改造によって事態を乗り切ろうとしている。

 そもそも米国産牛肉の制限解除は前政権のときから政府間で交渉が行われていて、国民 の間には制限解除に強い反対があった。李大統領は多分、それを軽くみたのだろう、根回しもせず、国民の頭越しに制限解除に踏み切り、反発を招いてしまったのである。

 事態に驚いた李大統領は慌ててブッシュ米大統領に救いを求め、制限解除を中断しても らったのだが、事態が収まるどころか、国民の方は輸入業者の「自主規制」にすぎないとさらに反発を強めた。

 理念なき実用路線などといわれる李大統領の政治は、新しいもの、あるいは変化を受け 入れる開明性ともいえるのだ。「理念」というと美しいが、ときには過去に引きずられた頑迷さの場合もある。李大統領は軽率といわれても仕方のない面もないわけではないらしいし、独善もあるようだが、改革を起こす人であることに間違いはなく、ここは開明性を失わず踏ん張ってもらいたい。


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