東京・秋葉原の通り魔事件で、殺人未遂容疑で逮捕された派遣社員、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)とみられる人物が、事件の1週間以上前の先月30日と31日、自身が女性にもてず、友達が少ないことを話題とする携帯電話専用のネット掲示板で、論戦に過熱するあまり「みんな殺してしまいたい」などと、「ネット住民」に対する、無差別殺人を予感させる書き込みをしていたことがわかった。
31日には加藤容疑者のものとみられる書き込みをした人物が、上京の際、秋葉原に立ち寄ったとする記載があり、ネット上の匿名の論戦が、無差別殺人のきっかけになった可能性もあるとみて、警視庁万世橋署捜査本部は、掲示板サイトの運営会社に協力を求めるなど、事実関係の裏付け捜査を進めている。
問題の掲示板の表題は「【友達できない】不細工に人権無し【彼女できない】」で、5月19日に開設された。加藤容疑者とみられる「主」が、友達がなく、良い仕事につけない「不細工な自分」を「無価値。ゴミの方がマシ」などと書き込んだ。
これに対し、5月29日には「冗談抜きでも友達になりたい」と名乗る女性が登場した。
しかし、翌30日朝、事態が急変する。
異性と交際できない悩みを吐露する「主」に、「友達」が、中卒の自分にも、大卒の交際相手がいることを打ち明け、「人生どう転ぶかわからない。主にもきっと良い相手が出来ると思う」とエールを送った。
これに対し、「主」は、やはり女性は学歴を気にすると反発し、「友達」がファッションに水を向けても、「服に気をつかわないと彼女ができないことはわかりました」などとすね続け、最後は「イライラします。みんな殺してしまいたいです」と書き込んだ。
「友達」がなだめるが、怒りはおさまらず、「殺人予告?」という匿名の問いに「主」は、「予告するならもっと具体的に書きます」と答えた。
以後、「本当の友達が欲しい」と、心の揺れを感じさせる記述もあったが、匿名のネット空間からの返答は、「皆を踏みにじったのはお前。友達できるはずがない。しねよ」。「主」は「ネットいじめにあった」と警察に通報したと書き込んだ。31日、「主」は「服を買い」に東京・上野に向かい、その足で、秋葉原にも寄ったとする記載もある。
この論戦以降、掲示板では、「主」による自虐的な書き込みだけが目立つようになり、6月8日早朝、「秋葉原で人を殺します」と明確な殺意を示した表題の掲示板が別途開設され、連続殺傷に至る経過を詳しく書き込んでいた。
毎日新聞 2008年6月10日 15時00分(最終更新 6月10日 15時00分)