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「天下り」人事「早回し」

2008年06月10日

 団塊世代の大量退職の余波が、役所の「天下り」ポストにまで及んできた。これまで福岡市幹部OBの指定席だった輸入穀物管理業「箱崎埠頭(ふ・とう)」の社長が、予定を2年早めて交代する。退職する後輩の市幹部が増えてポストが不足、いち早く「玉突き人事」の必要に迫られたようだ。

 現在の社長(66)は06年、箱崎埠頭と工業団地内の企業に電気などを供給する「箱崎ユーティリティー」の社長に同時に就任。両社には市の第三セクター博多港開発が出資し、人事にも市が影響力を持っている。歴代社長は市幹部OBが務め、現在の社長も市大学移転対策局長や環境局長を経験した市の幹部OBだ。

 社長職は慣例で「2期4年」とされてきた。現在の社長も、就任当初は「2期4年を全うする」と周囲に話していたという。しかし9日に開かれた箱崎埠頭の取締役会で後任人事が決定。異例の1期で退任することになった。

 後任(61)もやはり市幹部OB。69年市役所入り。人事担当が長く、準筆頭格の財政局長に50代前半で就いた市役所の「エース」。その後、環境局長を最後に60歳の定年前に退職し、天下り先の福岡地区水道企業団企業長と市森と緑のまちづくり協会理事長を計5年務めた。

 ところが、3月に退職した市都市整備局長(60)が4月1日付で同協会理事長に転身することに。このとき同時に退職した本庁の局長はほかに2人、いずれも市の外郭団体の理事長として天下りした。

 無職となった「エース」の行き先に困った市は、箱崎埠頭の社長に目を付けた。「1期目だが66歳と高齢。年金もあり収入に困らない」と、後進に道を譲るよう頼んだらしい。現社長は「退職金制度は廃止したため、もらわない」と、箱崎埠頭の退職金は受け取らないと説明している。

 市によると、局長級の幹部職員が天下る「ポスト」は、三セクの統廃合などで減っている。一方で団塊の世代が退職期を迎え、毎年1ケタで推移してきた局長級職員の退職者が、06、07年度はいずれも11人を数えた。

 ある市幹部は「退職者は増えるのにポストは減る。やりくりするためにも、天下り先の退職も早めることがありうる」と言う。

 ただ現社長の経営手腕を評価する声も強く、予定より早い辞任に首をかしげる関係者も多い。取引先の民間企業の幹部は「世界的な穀物狂乱相場の時期だからこそ、確実な経営が求められる。なのに後の順番がつかえているという役所の論理で社長を交代するのは、いかがなものか」と話す。

 社長人事は、箱崎埠頭が23日、箱崎ユーティリティーは24日の株主総会で正式に決まる見通しだ。

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