(第1回)メンタルヘルスの知識がない上司が壊した部下の心(1) - 07/02/22 | 09:00 |
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松崎一葉
私がある企業で産業医として働き始めた頃は、今ほどうつ病が社会的に認知されていませんでした。「精神がたるんでいるからだ」とか「気合いが足りない」など、根性論が当たり前のように語られていました。また、当の本人も自分がうつ病ということを認めたがらないことが多々ありました。
そんな時代に、私が経験したあるビジネスマンのお話を紹介しましょう。彼は30代後半のビジネスマン。大学時代はラグビーをしていたというだけあって、仕事のやり方も体育会系。「やればできる」の精神で仕事をこなしていました。そんな彼に栄転の話が舞い込みました。大阪支社から東京本社への異動と同時に、課長に昇進するというものです。妻と幼稚園に通う娘の3人で東京に引っ越し、新たな生活が始まりました。
本社に勤務して半年もした頃でしょうか。彼の様子がおかしくなったのです。朝なかなか起きられず、新聞も読まなくなった。土日もベッドにもぐり込んだまま起きようとしない。娘とも遊ばない。食欲もなくなり、どんどんやせていく。
心配した彼の妻が、無理矢理、病院に連れて行くと、「身体には異常がありません。精神的なものかもしれませんね」と医師に言われ、精神科を紹介されました。さらに嫌がる夫を連れて精神科クリニックに行くと、即座に「うつ病ですね」と診断されました。
彼にとっては、思いもよらぬ診断でしたが、思い当たる節はあったのです。体がだるく、夜も眠れない。仕事をするのも苦痛なくらい。転勤早々に仕事でミスをして以来、上司も部下も自分を見下しているような気がしてならない。「早く業績を上げなければ」という焦りばかりが募ってしまう。
医師の勧めで、彼は1カ月の休職をとることになりました。「うつ病? 転勤してきたばかりなのに困ったね」上司は、しぶしぶ診断書を受け取りました。
休職中は死んだように眠り続けました。そして、少し調子がよくなってきました。すると、1カ月も経たないうちに職場に戻ってしまったのです。休んだ分も取り戻そうと、彼は復帰初日からハードなスケジュールをこなしました。ところが、そんな彼の思いとは裏腹に、2カ月後にうつの症状がぶり返してしまったのです。
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