「年に292万円で『高所得』と言われてはたまらない」。厚生労働省の調査結果が載った5日の朝刊を見た読者から、怒りの電話をいただいた。「後期高齢者」目前の、福岡市の74歳男性。
後期高齢者医療対象世帯が、従前の国民健康保険時代と比べ、負担が増えた自治体、下がった自治体の割合を調べた記事。年金の所得が177万円未満を低所得▽177万円~292万円未満を中所得--と分けて調査した結果だ。対象の中での相対的な分類だ、とは分かっている。ただ、全世帯の平均所得600万円弱に比べると、確かに292万円を「高所得」と呼ぶには違和感もある。電話の主は「いつの間にか国にだまされる。報道は別の言い方を」と訴えた。
今月改正された道路交通法は、75歳以上の高齢者に「もみじマーク」を車に付けることを義務づけた。無事故で通すタクシーのベテラン運転手が「なんで」と怒っていたのを思い出す。
年齢による一律の線引き。「高所得」の表現が「75歳を過ぎれば、292万円あれば満足でしょ」と聞こえるほどに、お年寄りを怒らせている。【徳永敬】
毎日新聞 2008年6月10日 西部夕刊