2万ヘルツ以上の高周波の音「ハイパーソニック」を聞くと頭がよくなる−。受験シーズン真っ盛りの今月3日、TBS系情報バラエティー番組「人間! これでいいのだ」(土、午後7時〜)で、受験生が泣いて喜びそうなタイトルが取り上げられた。ところが、番組の内容が捏造(ねつぞう)された疑いのあることが7日浮上した。
「捏造報道」と断じた8日発売の「週刊新潮」によると、番組ではハイパーソニックを聞くとα波が出て、集中力や記憶力が高まると紹介。その根拠として、(1)千葉工大情報科学部の論文「可聴域を超えた高周波が脳に与える影響」(2)風鈴をつるして学習効果を高める学習塾(3)京大の大島清名誉教授の証言−の3点を挙げている。
だが、取材は実にずさんだった。
(1)は昨年10月、番組の下請けプロダクションから取材依頼があった際、研究者側が「研究テーマに含まれない『集中力や記憶力が高まる』という趣旨では受けない」と断ったにも関わらず、論文を番組で無断利用した。
(2)では、風鈴が生徒の頭上で揺れているかのように紹介されたが、この塾では学習効果を高めるために風鈴を使用したことはなく、TBSが“演出”のために利用したものだった。塾関係者は「娯楽番組だと思ったので、趣旨に沿うようコメントした」と明かした。
(3)は大島氏自らが新潮側に対し、「人によって、α波が出る音は違う」とハイパーソニック効果を否定。番組では「何か音や音楽を聴くとα波が出るってことはね、集中力が高まり、その結果、記憶力も高まってくる」という一般論的なコメントに、なぜか「ハイパーソニックを聞いて」というテロップが重ねてある。
テロップについて、TBSは夕刊フジの取材に対し、「視聴者にわかりやすくするため」と説明しているが、ミスリードであることは明らかだ。
TBSは文書での回答の中で、「研究者に直接了解を得ずに放送してしまったことはお詫びしたい。また、『頭のよくなる音』と断定表現するなど、表現上行き過ぎた点があり、それによって視聴者に誤解を与えたとしたらお詫びしたい」と行き過ぎを認めた。
だが、「論文や研究者の発言をねじ曲げて紹介したり、データを捏造するなどの行為は一切行っていない。捏造番組(との報道)は、はなはだ遺憾に思う」としている。
「人間!」の前身は、昨年5月に白インゲン豆を使ったダイエット法を紹介し、視聴者が下痢や嘔吐を訴える騒動となった「ぴーかんバディ!」。企画も看板も変えて出直したかに見えたが、続投となったプロデューサーは、どうやら再び過ちを繰り返してしまったようだ。
ZAKZAK 2007/02/07