佐賀県武雄市の医院で昨年11月、入院していた同市山内町、板金業、宮元洋さん(当時34歳)を暴力団関係者と間違って射殺したとして、殺人罪などに問われた指定暴力団道仁会系組員、今田文雄被告(61)に対し、佐賀地裁(若宮利信裁判長)は10日、懲役24年(求刑・無期懲役)を言い渡した。
論告などによると、今田被告は、昨年8月に道仁会の分裂に伴う対立抗争で、自分が所属する道仁会の松尾義久会長(当時)が射殺された事件への報復を計画。医院の3号室に暴力団関係者が入院中との情報を得たが顔や名前を確認せず、昨年11月8日早朝、2階の同室にいた宮元さんに向け、無言のまま拳銃を発射した。今田被告は銃撃対象だった九州誠道会の関係者が病室を入れ替わり、既に退院していたことを知らなかった。
今田被告は車で逃走したが、事件から17日後の11月25日、福岡県大野城市で、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された。
初公判(3月17日)で、人違いで射殺したとする起訴事実を全面的に認め、遺族に謝罪した。しかし、被告人質問では一時人違いを認めたことを覆すような発言もあり、検察側は「公判でも虚偽の弁解をし、反省しているとは到底認められない」と指摘した。
遺族は今田被告に死刑を求刑するよう検察側に求めていた。佐賀地検は先月21日の論告求刑公判の閉廷後、死刑求刑も検討したことを明らかにしたが、「被害者数や判例を総合的に考慮した」と、求刑理由を補足した。
暴力団抗争で一般市民が巻き込まれた主な誤射殺事件としては、大阪市住之江区の元NTT職員(当時66歳)が90年に射殺され、実行犯の2幹部に懲役18年が確定。沖縄県でも90年、組員と間違って高校生を射殺した組員らに無期懲役などが確定している。【高芝菜穂子】
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