河村常雄の劇場見聞録

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芝居小屋を守り、愛する自治体や市民団体・個人の集う全国芝居小屋会議(伊藤英昭会長)が11月24,25の両日、埼玉県川越市の映画館スカラ座で開かれた。
こんぴら歌舞伎で知られる香川県琴平町の金丸座など江戸時代の様式で作られた木造の12劇場が参加している組織で、毎年ゆかりの地で開催している。
13回目の今回川越市で開かれたのは市内に廃墟のようにして残る旧鶴川座復興運動を支援するためだ。
会議では、市民運動により再生した熊本県山鹿市の八千代座や復興運動を始めた石川県七尾市の「でか小屋」の近況が報告され、常磐津和英太夫の演奏が披露された。
そして今回の眼目である鶴川座支援の決議文が数日後に発表された。
内容は次の通り。
「明治30年ごろに造られたといわれる旧鶴川座は、首都圏に残る唯一の木造芝居小屋と推定されます。これを再生し活用することは蔵造りの町・川越の魅力をさらに高め、文化活動の発信源として新たな展開をもたらすはずです。全国芝居小屋会議は、旧鶴川座が伝統的芝居小屋として歴史的根拠に基づき復原され、保存・活用され、芝居小屋会議の一員として、共に活動する日が一日でも早く訪れることを心から望みます。そのためには、会議に参集した全国の芝居小屋は、復原方法、活用の仕方、市民との協働など、復興の過程で培った経験を基に、最大限の協力を惜しまない所存です」
これまでに、金丸座で何度も歌舞伎を見た。秋田県小坂町の康楽館や福岡県飯塚市の嘉穂劇場、八千代座も訪れたことがある。
現地に行くたびに、芝居小屋はけっして失ってはならない文化遺産であることを再認識してきた。文化遺産は活用してこそ価値がある。
数年前に訪れたとき廃墟のようだった兵庫県豊岡市の共楽館の修復が進み、来年こけら落としをするという。
来年の会議開催地となる七尾市もでか小屋の再生に燃えている。うれしい限り。
全国に数千もあったといわれる芝居小屋。映画やテレビに押され姿を消し、現存は30ぐらいと推定されている。そのうち修復可能なのは、いくつあるだろうか。
会議に参加するのは二度目だが、いまだに修復されない各地の小屋の復興を願って、今回賛助会員になった次第である。

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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