2001年、大阪教育大付属池田小を襲った悪夢。包丁を持った男が乱入し8人の小さな命を奪った。「助けて」「痛い、痛い」。悲鳴と泣き声、教室の床は血の海…。恐怖の現場を本紙はこう伝えた▼あの日と同じ6月8日。再び惨劇が起こった。今度は歩行者天国でにぎわう東京・秋葉原。25歳の男が通行人に次々と襲いかかった▼暴走したトラックは人をなぎ倒し、振りかざした両刃のダガーナイフが突き刺さる。悲鳴が上がり崩れ落ちる人、血だまりのなか息絶え絶えの人…。7人が命を落とした▼犠牲になった人に落ち度があるはずもなく、突然に家族を失った遺族の無念は計り知れない。「世の中が嫌になった。誰でもよかった」。無差別殺人の理不尽さに一層怒りがこみ上げる▼「秋葉原で人を殺します」「車が使えなくなったらナイフを使います」。容疑者の男は携帯電話サイトで犯行を予告し事件20分前には「時間です」と決行を宣言していた▼中学時代からゲームに熱中し自分の性格を「ひねくれ者」と書いた男。勤務先ではおとなしく、宿舎の同僚とも付き合いが少なかったという▼内向的で仕事にも不満が募る日々の果て、大胆な犯行でようやく主人公になった気分だったのだろうか。「誰でもよかった」。最近相次ぐ無差別殺人に、生身の命とゲームの命の区別も付かないのかとがく然とする。