米銀行大手JPモルガン・チェースは5月31日にサブプライムの損失で破綻(はたん)した米証券大手ベアー・スターンズの買収を完了した。しかし、同時に執行する予定だった連邦準備制度理事会(FRB)によるベアー社に対する290億ドル(約3兆500億円)の支援決済は、この6月26日まで延期することでニューヨーク連銀と合意した。
この買収による人事で返り咲いたベアー社の元会長が、前会長を非難するなど泥仕合が続いている、とウォール街の友人らは眉をひそめる。サブプライムの失態では米金融最大手のシティグループの会長、証券大手メリルリンチの会長をはじめ引責辞任が続き、ウォール街は軒並み大規模な人員削減を余儀なくされているが、それが名分だ、という気持ちが強いようだ。
そんなことで、バーナンキFRB議長がベアー社救済に動いたことを疑問視すらする声も出てきた。サブプライム破綻(はたん)が世界的な金融危機に波及するのを食い止めようとするあまり、FRBの誇る伝統的な中立性を放棄したのではないか、といぶかり、一投資銀行のドジをかばうより、インフレ抑制という本来の役割に徹すべきだ、と利下げ一本やりのFRBのかじ取りを懸念する向きもいる。また、バーナンキ議長がサブプライムの直接的な被害者である低所得者向けの救済策を民主党に働きかけている動きに、ブッシュ共和党政権が神経をとがらせているという指摘もある。
「寄らば大樹の陰」を嫌うウォール街の自立心を見るようだが、銀行以外の金融機関を公的に支援するのは1930年代の大恐慌以来。バーナンキ議長の度胸は英断だったかどうか、歴史の判断にゆだねるほかはないかもしれない。(昴)