勉強会で投資信託の仕組みを説明する石津史子代表=4日、大阪市
地元で、お母さんたちがつくった。だからその名は「浪花おふくろファンド」。2人の女性が大阪市で投資信託の運用会社を設立し、この春から投資家を募っている。「家計に身近な投信」を掲げ、投資リスクの理解を含めた初心者への勉強会などにも力を入れている。
社会保険労務士の石津史子さん(51)と税理士の中井朱美さん(52)は子を持つ親。「浪花おふくろ投信」を設立し、この4月に運用開始にこぎつけた。東京23区以外に本社を置く投信運用会社はほかに例がない。
今月4日夜、大阪市中央公会堂に集まった主婦や会社員ら約40人を前に石津さんが力を込めた。「調味料のように近くにあって、愛してもらえる投信にしたい」
5月に始めた勉強会は5回を超えた。ファンドの投資先や元本割れなどリスクを含めた投信の仕組みを丁寧に説明する。「参加者の理解度は様々だが関心は高まってきた」と石津さん。ファンドは個別企業に投資せず、東京海上アセットマネジメント投信などの投信商品に投資する「ファンド・オブ・ファンズ」型だ。今の資産残高は約1億1100万円。賛同した225人が投資のための口座を開いている。
起業のきっかけは90年代後半にさかのぼる。石津さんは大阪で社会保険労務士事務所を開いていた。フィナンシャルプランナーとして顧客の退職後の資産運用の相談に乗った。そのころ証券会社や銀行が破綻(はたん)。消費者が金融商品に不安を持つ様を目の当たりにした。「長期に運用を託せるものが少ない」と実感した。
そこで投信に目をつけた。「リスクや仕組みが十分わかれば、きちんと財産づくりをイメージできる商品だ」。東京の運用会社の勉強会に参加。起業の助言も受けた。投信の運用会社があるのは東京だけ。「生まれ住んだ大阪で」と、知り合いの中井さんと地元で設立した。
でも2年ほどは、その「東京集中」に悩まされた。運用会社にはインサイダー取引などの法令順守をチェックする担当者らを置く必要がある。関西で人材は見つからなかった。証券会社のOBや都内の若手を説き伏せて、ようやく今年1月に金融庁による登録を受けた。
米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題などでの市況低迷が不安材料だ。石津さんは「財産づくりの必要性、投資とは何かを伝えたい。インフレに負けない運用がこれからは大事」と話す。地道に育てて資産100億円規模を目指すという。(大宮司聡)