くいだおれの店頭では、太郎と記念撮影する観光客が後を絶たない=大阪市中央区
7月に閉店する大阪・道頓堀の飲食店「くいだおれ」が、看板人形「くいだおれ太郎」を保有したまま、飲食事業のみ売却する方向で検討していることがわかった。太郎が第三者の手に渡れば、店側が長年かけて作り上げたイメージが変わる恐れがあるためという。飲食事業と太郎をセットにした買収を望む企業もあり、慎重に協議したうえで結論を出す見通し。
同店は4月、道頓堀川南側にある店舗ビルの老朽化と家族経営の限界を理由に、7月8日の閉店を発表。半世紀にわたって店頭に立ち続けた「太郎」とともに事業を売却する意向を示していた。土地・建物については今後も管理する方針。
同店には200近い企業や団体が買収を打診。一方で、地元などから「太郎を道頓堀に残してほしい」との声が相次ぎ、各地のイベントに招待されたり、切手シートや本の発売が計画されたりするなどの「太郎フィーバー」も続いていた。
こうした状況を受けて、店側は太郎の扱いについて検討。「大阪のシンボル」として幅広い支持を得てきた太郎のイメージを守るため、著作権の管理や活用方法を女将(おかみ)の柿木道子会長ら現経営陣が決められるようにする案が持ち上がったという。
柿木央久(てるひさ)取締役は朝日新聞の取材に、「そばに家族(経営陣)がいないと、太郎の『人格』が変わるかもしれない。買収打診先の意向を大事にしながら、飲食事業を太郎と分けて売却できるか調べたい」と話している。(後藤洋平)