NECが4月に発売した「Lui」の専用端末=東京都
ソニーが多色展開するVAIO(バイオ)シリーズ=同社提供
国内の家庭向けパソコンメーカーの売り文句が変わってきた。これまで処理能力や記憶容量を競ってきたが、消費者が「使い勝手」や「デザイン」を重視し始めたからだ。低価格戦略を進める海外勢に対し、国内勢は価格競争に巻き込まれないよう、独自の魅力づくりに必死だ。(湯地正裕)
国内最大手のNECが今春発売した「Lui(ルイ)」の売りは、「これまでにないパソコンの使い方の提案」(高須英世・NECパーソナルプロダクツ社長)だ。自宅に置いたサーバーに保存したソフトや画像を、手帳型やノート型の専用端末を使って外出先で利用できる。
デザインが注目されてヒットしたのは、ソニーの「VAIO(バイオ)」の新シリーズ。昨秋から光沢のある赤や金色などで多色展開する。富士通が今春発売した「BIBLO(ビブロ)」は、ピンクや金色など3種類の天板を気分によって「着せ替える」ことができる。「性能ではなく、見せ方も重要になっている」(担当者)という。
特定のファン層を獲得しようと、NECは昨年、天板に「ハローキティ」をクリスタルガラスで装飾したノート型を発売。人気アニメの押井守監督がデザインを監修した製品も夏には投入する。
背景には、家庭用パソコンの高性能競争が一段落したうえ、携帯電話やネットに接続できるテレビが普及し、通常のユーザーにとって「パソコンも必要最低限の機能さえあればいいとのニーズが増えている」(調査会社・MM総研の中村成希アナリスト)という理由がある。
国内の家庭向け出荷台数は00年まで急激に増えて以降は、横ばいが続く。昨年は新OSソフト「ウィンドウズ・ビスタ」が発売されたが、前年比2.5%増の562万台にとどまった。
ここ数年1台あたりの平均単価は年に2千円程度下落しており、今後も低価格化が進む見通しだ。さらに日本ヒューレット・パッカードが今月から5万円台の小型ノート型を発売するなど、海外メーカーが低価格攻勢をかける。
低価格路線に消極的な国内メーカーには、「海外勢にない魅力をアピールできなければ、パイが増えない中でシェアも奪われる」(国内メーカー)との危機感がある。だが、「デザインで一過的に引きつけるだけでなく、今後はどんな商品を売りたいのか明確な戦略が必要」(中村アナリスト)との指摘もある。