民主党は8月1日、「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」を国会に提案しました。 その理由は、「政府案が出なくなった以上、民主党案を世に問わなければなりません」(江田五月参議院議員)ということだそうです。
公知のように、今国会は、8月13日が会期末です。 衆議院法務委員会は、国民の反対が強い「共謀罪」新設などの論議がおこなわれているもとで、実質的な審議ができる状況ではありません。 つまり民主党案は、郵政がらみの解散・総選挙に向けたパフォーマンスであることは明らかです。 さらに法案の取り扱いが今後どうなるかは不透明ですが、今後の国会において自民党内の協議をうながし、法務省案との修正取引をすすめて、何らかの法案を成立させることを意図したものと考えられます。
この民主党案は、法務省案よりさらに「解同」(部落解放同盟)の意向に沿った内容であり、国民の言論表現の自由を侵害しかねない、ひどいものです。
民主党案は、特別救済の対象を「不当な差別的言動であって、相手方を畏怖、困惑、又は著しく不快にさせるもの」としていますが、これは法務省案と同じく定義がきわめて曖昧で、恣意的な運用が可能です。
また民主党案は、人権委員会を内閣府の外局と、地方にも設けるとしています。 しかも中央・地方の人権委員会は「人格が高潔で人権に関して高い識見を有するもの」、人権擁護委員は「人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員のうちから」推薦することとしています。 これは非常に危険なことです。 差別でもなんでもないものを「差別だ」として、多数で押しかけて威圧的に「差別糾弾闘争」を押しすすめ、人権侵害を引き起こしている「解同」やその仲間が人権委員や人権擁護委員に任命されれば、言論の自由や表現の自由が抑圧され、「自由な意見交換のできる環境づくり」を大きく損なうことになります。 そして、いまだ「解同」との癒着を断ち切れていない行政が少なくない現状では、この危険性がきわめて高く、一方で民主党案には、公平な選任手続きの保障もなければ、委員の政治的中立性も明記されていません。
民主党案は、「人権」や「差別」などの文言をきちんと定義しないことで法律の恣意的な運用を可能にし、具体的な権利侵害行為を問題とするのではなく、国民の内心への介入・監視・管理という、非常に危険な事態を常態化しかねないものです。
全国人権連は党利党略による民主党の暴挙をきびしく指弾するとともに、審議未了・廃案に追い込むため、全力をあげて奮闘するものです。
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