思い残すことはない。強豪・了徳寺学園に2勝1敗2分で2年ぶりV。康生が3度、仲間の手で宙に舞った。
「みんなと戦えた。後悔することなくやれたと思う。ウルッと来ましたけど、我慢しましたね」
初戦は動きが硬く引き分けたが、準決勝で輝きを取り戻した。全日本5位の谷口徹に残り32秒から小外掛けで尻もちをつかせ、横四方固めへ移行して一本勝ち。決勝では佐藤武尊から得意の内またで効果を奪い、最後は寝技で一本勝ちだ。
4月の全日本選手権では腰痛の悪化もあり、準々決勝敗退。北京五輪代表を逃し、引退を表明した。「会社へ恩返ししたい」とこの大会には出場を決めたが、この1カ月はほとんど練習なし。3試合とも痛み止めの注射を打っての柔道だった。
「自分は(84年ロス五輪無差別級金メダルの)山下2世と呼ばれて、とてもうれしかった。そういう、世界で活躍できる選手を作っていきたい」
今年結婚したタレントの亜希さんと一緒に、年内にも2年間の予定で英国柔道留学に出発する。日本柔道界の至宝が、港町・横浜で新たな船出を迎えた。
(周伝進之亮)