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【社会】

「助からないと悟った」 惨劇に言葉失う遺族

2008年6月9日 14時51分

 刺されて命を落とした東京芸大音楽環境創造科4年の武藤舞さん(21)=東京都北区。高校時代の同級生は「とにかく悔しい」と怒りをあらわにし、祖母は「まさか自分の孫が…」と言葉を失った。

 祖母は「孫は『音楽をプロデュースする仕事に就きたい』と言って、東京芸大に進学した。優秀な子で、将来も楽しみにしていたのに」と声を落とした。

 武藤さんは秋葉原の家電量販店の店頭で携帯電話販売のアルバイトをしていて、被害に遭った。「舞は旅行のお金をためるため、週末にアルバイトをしていた。まさか事件に巻き込まれるとは」と消え入るような声で話した。

 出身中学によると、武藤さんはソフトテニス部で活躍する傍ら、3年の夏には吹奏楽部にゲスト参加。成績は学年トップクラスで、生徒会の役員も務めた。部活の男性顧問(51)は「活発で明るく、みんなを引っ張っていくタイプだった」。

 秋葉原の現場では9日未明、都立日比谷高校時代の同級生の男子大学生(22)が手を合わせた。武藤さんはオーケストラ部に所属し、合唱祭では指揮者としてタクトも振ったという。大学生は「明るい性格で、クラスのムードメーカーだった」と言葉を絞り出した。

 亡くなった川口隆裕さん(19)=千葉県流山市=の父で会社員の健さん(53)は9日午前、自宅前で「現実を受け止められない。受け入れられない」と、一人息子を失った深い悲しみを語った。

 川口さんは、東京情報大学(千葉市)情報システム学科の2年生で、学校ではコンピューター技術などを学んでいた。8日は友人3人と秋葉原に行き、うち2人と一緒に歩いていたところ、容疑者のトラックにはねられた。健さんは「友人に好かれる優しい息子だった。夢であってほしい。悔しい思いでいっぱい」と話した。

 死亡した中村勝彦さん(74)=東京都杉並区=の長男は医師で、中村さんが襲われた際、そばにいた。この日は2人で秋葉原にパソコン関係の買い物に来ていた。

 長男は8日深夜、「救急車が来るまでの45分間、懸命に父の救命措置をしたが、冷静なプロの目になった時、助からないと悟った」と無念の表情で語った。

(中日新聞)

 

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