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松元整形外科内科クリニック
-LHL Matsumoto Orthopedics Clinic-

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造血
【はじめに 】

血液は、骨髄の幹細胞(Stem cell)から造られると云われてきた。しかし黄色骨髄化した老人でも血液は正常で貧血は認められない。
スポーツマン貧血の成因は不明で、スポーツを中止すると軽減治癒する作用機序も明らかではない。そこで我々は骨髄造血単独説に
疑問を持ち非骨髄細胞で造血があるのではないかと考えた。 血球を筋肉・脂肪・骨髄・軟骨と培養して血球の増加減少を
Costar Transwell(Photo1)を用いて調べた。Costar Transwell のInner partに組織細胞とRPMI-1640を入れ、Outer partに
組織提供者と同じ血型の血液+RPMI-1640の混合液を入れ、経時的に赤血球の増減を調べた。

【第1の実験方法】
(1)Costar FlaskにRPMI-1640 24mlと血液
(Blood)7滴を入れて充分ピペッティングした
赤血球混合液を作る。

(2) Transwellのinner partを持ち上げ、outer
partに@で作った赤血球混合液を3ml入れる。

(3) inner partを元に戻し、RPMI-1640 2mlを
inner partに入れる。(この時inner partとouter
partが混ざり合わない様充分注意する)

(4) 手術により採取された組織5mm×5mm×0.3mm
大を鋏で小さく切って、Transwellのinner part
に入れる。(Photo1)

Photo1 [Costar Transwell]
(5) コントロールとしてinner partに組織を入れず、
RPMI-1640 2mlを入れouter partには@で作った
赤血球混合液を3ml入れる。

(6) inner partを持ち上げ、outer partの液を充分ピペッティングし赤血球混合液を均一にし、この液を1滴採取してBunker-Turkを用いて第1回の赤血球の数を測定する。(Photo2)

(7) 初回測定後、37℃5%CO2インキュベーターに入れて培養する。24時間毎にinner partを持ち上げ(この時inner partの底は絶対洗わない事)outer partの培養液を充分ピペッティングして赤血球を均一化した溶液とした後に赤血球の数を測定する。
註:我々の使用したRPMI-1640は別紙の如き組成でFCS(牛胎児血液)は使用していない。
Photo2 [Bunker Turk]

【実験結果 Fig1〜4】
1) 筋肉組織の場合  Fig1の如く赤血球が増加する。
2) 脂肪組織の場合  Fig2の如く赤血球が増加する。
3) 骨髄組織の場合  Fig3の如く赤血球が増加する。
4) 軟骨組織の場合  Fig4の如く赤血球が減少する。




結論:筋肉・脂肪・骨髄で赤血球の増加が見られ、軟骨で赤血球は減少した。

【考按】
造血のメカニズムは既に完全に解明されたと決定してよいのであろうか。

(1) 従来発表されている骨髄造血学説は飢餓状態にした動物を用いた実験であり、正常の栄養状態では見られない事実に基く学説である。
(2) 老人では脂肪骨髄になっているが、特に貧血は存在しない。
(3) スポーツマン貧血の発症機序が説明出来ない。またスポーツを中止すると快復する秩序も不明である。
(4) 私が骨髄細胞を培養して観察しても、Erythoblastから核が抜けてErythrocyteになる現象は唯の1回も
認められなかった。
(5) 細胞の中の核が無くなって、赤血球になったとなると
 1) 核が細胞膜の外に出されることになる→核の無くなった細胞は生きられるか→生き残れない。
 2) 細胞の内で溶けて原形質と混合した場合→大きさからいっても構造からもその細胞は赤血球とは
   考えられない。又、観察されなかった。
 3) 癌・リウマチ・肝硬変・腎不全の患者の上層赤血球を培養すると不思議な事に培養白血球を加えると
   1〜3時間後にReverted cell(先祖帰り細胞)と名付けた細胞が出来る。他方、唯の上層赤血球にも
   培養後 2日位するとReverted cellが生ずる。これ等の細胞も発生後3日経過すると正常な白血球の如き
   状態になる。(Reverted cellに就いては後報にて詳しく報告します。

【まとめ】
従来造血は骨髄組織の細胞から造られるとされてきた。
今回我々が使用したCostar社のTranswellはpore size0.4μmという小さな孔を有する透過膜を底に有する、Photo1の如き物である。水溶性の物質は通過するが、細胞は通過不能である。それにも関わらず、
赤血球が増加している。
この事は、細胞は細胞からの原則にのっとり(cell from cell)赤血球が赤血球から増加したものと考えるべきである。
赤血球はDNAを有しないので赤血球造血が不可能といわれている。然し我々の実験では造血が行なわれている。この事実は赤血球がRNA-worldに属する極めて原始的な細胞と考えると理解出来る。

【Costar Traswellを用いた第2の研究方法】

Costar TranswellのInner partに股関節・肩関節周辺より得られた脂肪組織、筋肉組織、 骨髄組織を
5×5×3mm大採取し、これを鋏で切って細かくしてRPMI-1640 2mlの中に入れる。Outer partに前述の
造血の時と同じ様にした血球を入れる。培養3日目の一番血球が増加した時に、Outer partの血球を採取して、 これを3mlのRPMI-1640が入っているCoster flaskに入れる。この様にして準備したフラスコの中に、
緑膿菌を微量植え、血球の菌に対する運動と作用を観察した。更に、-20℃に凍結保存した培養白血球を
溶かして、微量の緑膿菌を培養中のフラスコに加えたものも別に用意した。
(微量については第1報で報告しています。)

【結果】
1. 脂肪組織で増血した血球は、早期から菌を攻撃する運動を示した。
2. 筋肉組織で増加した血球は脂肪組織で増殖した血球に比べて3~6時間遅れて菌を攻撃し始めた。且つ、菌の増殖抑制力も弱いようであった。
3. 骨髄で増殖した血球は増血しても、全く菌を攻撃する運動を見せなかった。
4. 大網や腸間膜の脂肪組織や腹壁の筋肉で培養した血球には増血作用は認められなかった。残存した赤血球も細菌に対する運動も示さなかった。
5. 上記1.2.の血球にiL(培養白血球)を加えると菌の増殖を抑制する力が強化された。然し貪食作用は1回も観察されなかった。

第2の実験の考按
造血が何処で行われているかに就いて、現在骨髄造血説が極めて有力です。否骨髄造血説のみを記して、それで良しとしているかの如き成書が多い。森下氏によると「骨髄造血概念を成立せしめるために重大な役割を果たしたのは、ドーン Doan、カニンガムCunningham&Sabin(1925)やジョルダン Jordan(1936)らの実験である。彼らは、ニワトリやハトを10日間にわたって断食状態に置き、その骨髄組織における造血現象を認めた。そして彼らをはじめ現代医学者及び生物学者たちは、この断食下の非生理的な現象を、生理的な造血現象として解しているのである。・・・・」
([血球の起源] 生命科学協会 74頁 著:森下敬一より)。
Photo3の如くニワトリの場合血球は、私が魚型と名付けた血球であって、我々人類 の血球の如きドーナッツ型のものではありません。従って、結論を直接人類の血球造血にもって来る事自体には、私は疑問を持っています。然し正常に食餌を与えては、全く出現してこない血球を観察していたのです。10日間も食餌を与えない鶏の血液と骨髄を観察して、そこに出現した血球を恣意的に適当に並べて主張しています。これに関しては、森下氏が科学的に正しいと考えます。

腸管造血説を主張した、森下氏の説はそれに比べてより科学的な方法と云えます。モエラという物質を中心に腸管の繊毛下で造血されていると主張されております。
この説で問題なのは、絶食或いは断食療法を行った人達の血球に変化が出現すると予想されます。然し、断食道場で断食をした人の血球に異常が起っているという発表を読んだ事がありません。断食をすると逆に身体の調子が良くなると主張している断食場主が多く、その信者が、今でも多くおります。同様に赤痢・コレラ・腸チブス等消化器疾患の時の血球変化からも、納得出来る臨床データはないと考えます。森下氏の実験でも従来の説と同様にスポーツマン貧血の発症機転と、逆にスポーツを中止した後に、自然にスポーツマン貧血が治るという事実も説明出来ません。従って、私は森下氏の説にも反対です。
次に核の問題です。私の見ていない所で核が細胞から消失したとします。核が見えなくなった細胞は生きていられるのでしょうか?最近核を取り出して行う遺伝子操作の実験を見ても核を取り出された細胞は全て死んでしまいます。生き続けて活発な活動をしません。従って、核が外へ出ると考える事は無理です。そうなると、残された考え方はたった1つです。核が溶けて細胞質の中に溶け込んでしまい観察出来なくなるという事です。
これは有るかも知れません。然し、この説で困ったことが1つあります。核を有する細胞は赤血球に比べて大きいのです。顕微鏡下で見ても、大きさの差はどうしようもありません。この大きさが小さくなって現在の赤血球になるという過程の細胞を見つける事が難しいのです。最近白血球の報で述べた如く、癌・リウマチ・肝硬変・腎不全の患者さんの上層赤血球を培養するとReverted cell(先祖帰り細胞)と私が名付けたPhoto4の如き細胞が出現します。この場合も核は出ません。大きさも極めて大きな物もあったり、
色も濃くとても通常の赤血球とは似ても似つかぬものです。これも、不思議な事に2~3日すると元の赤血球に戻りますが、核に関しては不明です。現在の骨髄造血学の説には無理が多すぎます。

最後に世の中の生物は初期は小さく簡単です。時と共に次第に細胞が増加し細胞自身も複雑化し、進化してより複雑な型にと変化し進化します。然し現在の骨髄学説は、これと全く逆で複雑な細胞が単純な細胞へと進化するというのです。全く変な考え方なのです(表1)。細胞を自分の考えにより、都合よく勝手に並べたものだと、私も森下氏と同様、断言します。私の実験はCostar Transwellを用いています。0.4μmという小さな孔が開いている膜が底にある容器です。従って如何なる細胞も穴を通って外に出る事は出来ません。それにも関わらず、赤血球が増加しております。特に興味があるのは、四肢の大関節周囲の筋肉や脂肪組織(黄色を呈する)では増加しましたが、腹腔の大網や腸間膜等の消化器周辺の白色をした脂肪組織では造血現象は見られません。同様に腹部筋肉や前肢・下肢等の脂肪組織では増血は見られません。末梢骨の骨髄や椎弓の骨髄でも増血が見られません。若い人の大腿骨や、腸骨の骨髄組織では造血はするのです。スポーツマン貧血は、余りにも激しいスポーツの訓練をするために、筋肉組織や脂肪組織がエネルギーを造る事に手一杯で造血する能力を失うために貧血を起こすのだと、私は考えます。従ってスポーツさえ中止すれば筋肉や脂肪の過負荷がなくなり自然の造血を始める。特別な治療をしなくても自然に貧血は治るのはこの為だと考えます。


【表1】
最後に私は肝臓でも膵臓でも腎臓でも子宮でも卵巣でも、造血は行われていると予想しています。問題は量の多少です。特に肝・腎の造血が障害されるために、肝・腎疾患の貧血が出現する面もあると想像しています。残念ながら、肝・腎・膵・子宮・卵巣の組織が入手出来ないので未だ実験はしていません。協力者を待っています。

関節リウマチの貧血は如何にして起こるのかに就いては別の実験で明らかになりました。
関節リウマチ(RA)の人の血球を1滴及びMH法で上層・下層に分けて培養すると、通常の血球の寿命は1滴〜18日±2日、上層赤血球は18日±2日、下層赤血球は14日±2日前後です。然し、RAの貧血の人では1滴が7~14日、上層赤血球も10~14日、下層赤血球では10日前後と非常に寿命が短くなっているのです。私はRAの貧血を短寿命性貧血症と考えております。何故短命なのか、未だこの点は証明していません。

RAの場合、発症すると次第に痩せます。少なくとも発症前より体重が低下する例が圧倒的に多い。但し、ステロイドを投与されている人は、ステロイドによる浮腫により見かけ上の体重増加が存在するので判定しにくい例もあります。一方リウマチが治ってくると、浮腫は消退し確実に体重が増加します。私は培養白血球療法で治療していますが、1ヶ月単位で体重を見ていると、臨床症状が良くなる人は必ず体重が増加してきます。これらの事実から脂肪組織での造血能力低下も病気の進行と関係があると私は推定しています。筋肉に関しても、疼痛のため動かさない筋肉は次第に萎縮してきます。他方症状が軽快すると筋肉も太くなってきますし、症状も軽快してきます。従って、筋肉性の造血障害の貧血も考えられます。
最後にRAの血球を上層・下層に分けて菌を植えると、健康人に比べて明らかに菌の増殖が早い。このことに就いての研究は、造血とは直接関係がありませんので、項を改めて疾患別血球の細菌増殖抑制に関してという別の場で発表します。



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