押井守監督の名前を世界に知らしめたアニメ映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が、最新のデジタル技術により『GHOST IN THE SHELL/攻殻起動隊2.0』として全編リニューアルされることになった。
『攻殻機動隊2.0』の映像
士郎正宗の原作漫画が、米ドリームワークスによって3−Dで実写映画化されることが明らかになったばかりの「攻殻機動隊」。1995年に公開され、『ターミネーター2』のジェームズ・キャメロン監督や、『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟らにも多大な影響を与えた日本アニメの金字塔は、押井監督自らの監修で“新作”としてよみがえる。
西暦2029年、コンピューター犯罪が日常化した時代に、脳を除く全身を義体化した公安9課の少佐・草薙素子らが、正体不明のハッカー・人形使いをめぐる陰謀に巻き込まれていくSFサスペンス。その全カットを、3−DCGなど最新のデジタル技術によって新たに制作した。
「リニューアルしたいと思ったことは1度もないが、『攻殻機動隊』が誤解されていると思ったから。ヒットしていないし、ビデオやDVDで見た人は多いかもしれないが、スクリーンで見た人は少ない。ぜひスクリーンで見てほしいと思った」のが、リニューアルに踏み切った理由。事実、96年にアメリカ10館で公開された際は、興収51万6000ドルで、その後、日本の映像作品としては初めてビルボード誌のビデオセールス部門で1位を獲得し、“世界のオシイ”の名をとどろかせた経緯もある。
最もこだわったのが色で「昔はセル画で、色のコントロールが自由にはなかった。デジタル技術によって、今考えられる色でつくり直すことができた」という。ストーリーのカギを握る人形使いの声も、「彼女がいないと僕の作品が成り立たない」と絶大な信頼を置く榊原良子を起用し、アフレコをし直した。
さらに、川井憲次の音楽もリミックス。音響制作はランディ・トム(『Mr.インクレディブル』でアカデミー賞受賞)に依頼し、ジョージ・ルーカス率いるスカイウォーカーサウンドで最終の編集を行う凝りようだ。タイトルも「パート2でないし、パソコンソフトのようにバージョン・アップした意味合いで、明らかに1つ進化した」という思いから『2.0』とした。
最新作『スカイ・クロラ THE SKY CRAWLERS』の公開(8月2日)を記念し、7月12日(土)から、東京・新宿ミラノ、大阪・なんばシネマパークスなど全国5都市で限定公開される。
押井監督は「この2作品が同時期に公開されるのは面白いと思う。やっていることが全然違うし、似てもいない。1歩前に踏み出すには勇気も覚悟も必要。(観客にとって)その勇気づけの契機になればいい。『攻殻機動隊』のスクリーンで見てほしい。このバージョン・アップはDVDで分からないと思う」と期待を寄せている。
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