さまざまな細胞や組織になりうる万能細胞の一つ、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から心筋の細胞をつくる効率を最大20倍に高めるたんぱく質を、千葉大学医学部の小室一成教授らの研究グループがマウス実験で見つけた。心臓病の再生医療の開発につながる。新型の万能細胞である人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも試す。英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。
研究グループは、骨髄系の細胞を培養した液を使うと万能細胞から心筋細胞への分化が促されることに着目した。この培養液中にある「IGFBP―4」というたんぱくが心筋をつくる効率を上げる働きがあることをつかんだ。ES細胞から心筋細胞になるのは、これまではよくて全体の1%程度だが、マウスのES細胞にふりかけて培養したところ、10〜20倍もできた。
再生治療に使うためには、万能細胞を心筋細胞にして移植するか、このたんぱく質を含んだ薬剤を注射し、心臓内にある幹細胞を心筋に変身させる方法が考えられる。(竹石涼子)