北島が200メートル平泳ぎで世界新、北京金メダルへ弾み
[東京 8日 ロイター] 北京五輪の壮行会を兼ねた競泳のジャパン・オープンは8日、東京辰巳国際水泳場で最終日の競技を行い、北島康介が200メートル平泳ぎで米ブレンダン・ハンセンが持つ世界記録を0秒99更新する2分7秒51で優勝した。
英スピード社製水着「レーザー・レーサー」を着用しての記録樹立で、今大会3日連続、計3種目で自己記録を塗り替え、北京の金メダル獲得に向け弾みをつけた。
驚異的な世界新記録について北島は「自分の力もあると思うし、水着もそれなりにいい役割を果たしてくれているのかなと思う」と正直に語った。ただ、五輪を2カ月後に控え、コンディションがまだ最高ではないこの時期に200、100、50メートルすべてで自己ベストを更新したことは、「自信につながる」結果で、水着問題が加熱するなかで「泳ぐのは僕だ」とのメッセージをまさに泳ぎで表現したかのようだった。
<水泳連盟は契約外の水着解禁か>
今大会では、スピード社製水着を着た選手が日本記録を次々と更新した。3日間で合計17個の日本新が出たが、ほとんどがスピード社水着を着用して樹立したもの。特に、北島の世界新や入江陵介が7日に200メートル背泳ぎで打ち立てた世界記録に迫るような記録には周囲が驚きの声をあげた。
記録ラッシュを受け、日本水泳連盟は10日に契約外の水着着用を認める決定を行う可能性が濃厚。水連の佐野和夫専務理事は「選手が弾みをつけてきているので、そこに水をさしたくないとの気持ちがあり、自由に選手が(水着を)選べるように、制限がない方向にもって行きたい」との方針を示した。
北島や背泳ぎの中村礼子らを指導する平井伯昌コーチは「世界と戦うのだから(世界の)皆と平等にならないと話にならない。世界基準で考えなくてはいけない」と主張する。また、水連が契約しているミズノ、アシックス、デサントの3社以外の水着を解禁した場合でも、日本メーカーと個人契約を交わしたり所属したりしている関係で「スピード社の水着を着れない選手も出てくる見通しで、何らかの対策が必要」(北京代表選手のあるコーチ)との課題が残る。
<進化する北島>
4月に辰巳で開かれた北京五輪代表選考会を兼ねた日本選手権に比べれば、プレッシャーがなかったこともあり、北島はのびのびとした泳ぎをみせた。「感触がとてもよかった。自分の泳ぎができた」(北島)という。ジュニア時代から泳いできた辰巳のプールで世界新を出したいとの夢も叶った。
平井コーチは、入江のレースを参考にして、前半から積極的に行くよう北島に指示した。結果は、「もう一度2分8秒台を出せれば五輪でいい泳ぎができるんじゃないかと思っていた」という同コーチの予想を上回る好タイム。レース直後に北島は「今日はパーフェクトな泳ぎだとコーチが言ってくれると思う」と嬉しそうに語った。「こうした瞬間があるから、たまらなく楽しい」と北島。
ただ、輝かしい記録を打ち立てたことで、今後は追う立場から追われる立場に変わる。五輪では一段とプレッシャーがかかる。それだけに北島は「(今日の記録は)忘れて練習する。世界記録は出したけれど北京では挑戦者の気持ちで臨む」と金メダルに向け気を引き締める。あと2カ月で泳ぎを改善する余地もあるとみており、さらなる記録更新も目指す。進化を続ける日本競泳界のエースに「センターポールに日の丸を」との周囲の期待も一段と高まっている。
(ロイター日本語ニュース 大林優香記者)
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