CSR戦略には文脈作りが必要
おそらく、日本で唯一の社会貢献専門ビジネス誌の「オルタナ」最新号が送られてきました。
新しい雑誌が届くというのは気持ちの良いものだし、ワクワクしたりします。それで、さっそくお茶をしながら読みました。
今日のネタは、オルタナ最新号から、CSR戦略には文脈作りが必要というお話しです。
オルタナの中に、「NPOフロンティア」という日本経済新聞編集委員の原田勝広さんの連載コラムがあります。
今回は、「地雷撤去NGOは何故解散したか?」について書いてます。
セコム、トヨタなどが支援して、タイやカンボジアで地雷撤去事業を行い、大きな成果を上げてきたNGO「人道目的の地雷除去支援の会」(JAHDS=以下、ジャッズ)が突然解散した、という話です。
何故に絶好調のNGOが解散したかは、オルタナを読んでいただくとして、ジャッズ解散後も現地のNPOが頑張って事業を継続し、トヨタやキヤノンの現地法人が支援しているとのことです。
そのこと自体はいい話です。グッドニュースであります。
しかし、僕はこの話に違和感を感じてしまいます。
何故なら、トヨタやキヤノンが地雷撤去事業を支援することの「意味」が、すぐに理解できないからです。
これは、たとえば。トヨタがハイブリッド・カーや燃料電池車を開発するとか、キヤノンが使用済みのインク・カートリッジを回収するというような話と比べてみれば、よく分かると思います。
「社会のためにいいことしてるんだから、そんなことはどうでもいいじゃん」
そんな意見もあるでしょう。
もちろん、単なる慈善であればそれでOKです。
しかし、「本業としてのCSR」とか「戦略的CSR」とかって言い出すと、ことはそう簡単にはいきません。
戦略的CSRというのは、企業のブランディングやコーポレート・レピュテーションに繋がることですが、ということは、コミュニケーション戦略が重要ということでもあります。
では、コミュニケーション戦略とは何か?と言うと、これは、企業がやってることの「意味」を顧客や生活者や社会に対して伝え、理解してもらうことです。
ですから、パッと話を聞いただけでその「意味」が理解できないものは、コミュニケーション戦略としては失敗、ということになります。
そして、人が意味を理解するのは、文脈においてです。
つまり、戦略的に文脈を構築しなければ、「意味」も伝わらないのですが、CSRの分野では、まだまだこういった「文脈作り」が下手、というか、何にも考えてないように思えます。
文脈作りの具体的な考え方、方法論、事例などについては、今後、おいおいお伝えしていくつもりです。(竹井)
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コメント
人は物語を求めて生きていると言います。
それは竹井さんの言う「文脈」のことです。
CSRを文脈と言う切り口で語ってもらえるグローバルグッドニュース
むちゃくちゃ期待してまっせ
投稿 大浦 | 2008年6月 4日 (水) 11時02分
文脈作りの視点、確かに大切だと思います。私自身の言葉を使うのであれば、それはコーポレートレピュテーション(CR)の構築になるかもしれません。
私はCSRの展開の仕方というのは、大きく四つに分けられると考えています。
1.ボランティアタイプ(業務外・防御型)
2.コンプライアンスタイプ(業務内・防御型)
3.PR活用型(業務外・攻撃型)
4.CR構築型(業務内・攻撃型)
防御、攻撃という言葉は、それぞれマーケットに対しての受動型、能動型という言葉に置き換えてもらっても構いません。
私にとって、戦略型のCSRというのは、このうちの4番だけだと思っています。はっきりと言えば、CSRというのは、経営ツールの一つにすぎず、それだけを切り取って単独に成立させられるようなものでないと考えています。
業務内での能動的なCSRだからこそ、文脈作りが活きてくるのだと考えます。
投稿 坂井 | 2008年6月 5日 (木) 11時15分
「CSRというのは、経営ツールの一つにすぎず、それだけを切り取って単独に成立させられるようなものでない」
とてもすばらしい見識だと思います。
CSRをこの観点で捉えている経営コンサルタントはまだわずかです。
ビジネスモデルの進化にも関わることです。
あらゆる事象に光と影があり、ビジネスにもそれは言えます。
光を輝かせるのが前向きな取り組み方ですから
竹井流CSRをどんどん普及してかなくちゃなりませんわね
投稿 大浦 | 2008年6月 5日 (木) 20時28分
ども♪>坂井さん
この四つの分類法は分かりやすくていいですね。
オリジナルですか?
>はっきりと言えば、CSRというのは、経営ツールの一つにすぎず、
この表現は誤解を生みそうですが、言いたいことは分かります。
僕なりの言い方で言えば、
CSRは、それそのものが経営のメインテーマで、他のことはCSRのためにある、と。
企業が投資家から資金を集め、業績を上げ、規模を拡大し、雇用を創出するのもCSRの実現のためであります。
そうすると、自ずと、「企業は株主のモノ」という理屈に、多くの人が違和感を感じる理由も分かってきますね。
投稿 竹井善昭 | 2008年6月 6日 (金) 16時52分