思ったとおりだ。
大騒ぎ。
だってそうだろ。
サッカー部のアイドルマネージャーが男になっちまったんだから。
「え?オレそんなに変?」
蓮が取り囲んでいるサッカー部員に小首をかしげて聞いてる。
ちょ、男になったってのに女に見えるぜ、蓮。
その顔と仕草、男じゃねーよ。
「小野さんなんでいきなり性転換なんてしちゃったのさ。」
後輩よ、オレも同感だ。
あの可愛いロリ系美少女蓮華がいきなり男になるなんて変だろうが。
男になるよりも女のままでいた方がもててたし。
や、別にオレは蓮華の外見に惚れたわけではなくだな、中身もひっくるめて惚れたんだ。
「だって、オレFtMだったし。元の性別に戻るの、変じゃないでしょ。」
にっこり笑ってるお前がすげーかわいい。
まじで可愛い。
「ふーん、FtM、ねぇ。」
あ、とおるが蓮の胸見てやがる。
何、人の彼女の胸みてんだよ、ってもう彼女じゃねぇのか。
彼氏?彼氏ってことになるんかこれ?
って、ぎゃあああああああ!
「ひゃぁぁ!」
と、とおるの奴、胸を、蓮の胸を触りやがった。
蓮がめちゃ嫌がってとおるの手を叩き落とした。
「ほんとだ。胸なくなってるね。せっかくでかパイだったのにもったいない。」
「とおるてめぇオレの、オレのっ!」
オレはとおるに食って掛かった。
しかし蓮は今オレの恋人なのかどうか分からない。
とおるがオレの方に腕を回し、耳に息を。
やめんかぁ!鳥肌たった!鳥肌たった!
「晃、話がある。ちょっとこい。」
ちょこっと驚いた顔してる蓮を部室に残したままオレはとおるに連れてかれた。
部室裏でとおるが真剣な顔をしてオレに言う。
「小野な、あいつ性同一性障害じゃねぇわ。」
「は?なにを根拠に。」
言ってる意味がわかんねぇよ。
だって蓮は女でいるのが嫌で男になったんだろ。
今話題のトランスジェンダーに決まってるだろ。
「小野が男だったら胸触られて嫌な顔するか?男同士で触りっこしても嫌がらんだろ。」
「オレはお前に触られたら死ぬほど嫌だぞ。」
「知ってるわ!オレだっててめぇなんか死んでも触りたかねぇ!
んな事じゃなくてな、小野が男だったらあんな反応しねぇっつってんだよ。
あの反応、どっからどう見ても女の反応だったぞ。」
それはアレですか。
あんたは女の子とふがふがした関係を持ったことがあると自慢したいわけですか。
オレがまだ童貞だってことを笑いたいわけですか、コノヤロー。
「お前さ、彼氏のくせになんも知らねぇんだな、小野のこと。」
とおるがオレを鼻で笑う。
え?
なんもしらねぇって。
まさか、とおる、お前。
「彼氏だったらさ、彼女の辛いこととか、全部知ってさ、守ってやるもんだろ。
小野が何で男になったのかしらねぇけど、お前ってさ小野から信頼されてねぇんじゃねぇの。」
とおるの言葉が痛かった。
信頼、されてないかもしれない。
蓮が蓮華だったとき、何故男になりたいのか聞いたけど、返ってきた答えはひどく曖昧だった。
「もうすぐ朝練始まるぜ。」
オレは、蓮に信頼されてないのか?
そんなはずはない、と言いたい。
蓮華、なんでオレに相談もせずに男になっちまったんだよ。
オレらは恋人同士なんじゃ、ないのか。
蓮華、いや蓮のこと、俺はわかっていなかったのだろうか。
放課後の帰り道蓮の隣に並ぶ。
「なぁ、蓮。」
「何?」
うう〜、男になっても可愛いぜ、蓮。
なんで、男になっちまったんだよ。
女のままでもよかったじゃねぇか。
「なんで、男になったんだ。」
言葉に詰まりながら言った。
蓮が考え込んでる。
「女の社会になじめなかったから。」
は?確かに蓮華には女友達がいなかったが。
だからって何で男になる必要があるんだ。
「分かってたんだ。本当はFtMなんかじゃなくて、ただの自閉症だって。」
蓮が続ける。
「それにさ、俺が男になったら、晃くんも俺から離れられるかなって思って。」
え?離れる?どゆこと??
「本当は俺みたいなのと付き合ってて嫌だったんだよね。
晃君人がいいから。今まで無理に付き合ってくれて、ありがとう。」
「ちょ、待てよ、蓮華!」
俺は思わず蓮の女のときの名前を叫んだ。
「俺は、いやじゃない。嬉しかった、蓮華と付き合えて。
幸せなんだよ!大好きなんだ。死ぬほど惚れてんだ!」
蓮の両肩を力いっぱい掴む。
蓮が顔を真っ赤にさせて俺を見上げている。
「お前が男になったってかまわない、俺はお前のことが好きだから。」
夕日がまぶしい。
蓮の顔が赤くなっている。
俺は大きく息を吸う。
「俺と、付き合ってください。」
心臓がバクバクいってる。
「あり、がとう。」
俺は蓮にキスを落とした。